そのまま桜に攫われて
ある日 桜を見に来ていて
あぁ綺麗だななんてありきたりにも程がある思いを抱いて
それで、まぁもう満足したし帰ろうかなんて声をかけようと思って
君の方へ向いた
そうしたら、桜吹雪を身に纏う君がいて
儚く脆いようで心から嬉しそうなその笑みに
恋心が酷く燻られるのがわかる
綺麗で
怖くて
離れて行ってしまいそうで
気づけば君を掴んでいた
驚いたようなその表情は
はっきりと輪郭を持っていて
なんだか急に、馬鹿らしくなってしまって
だけど何故だかその手を離せなくて
どうしたのかなんて聞かれても分からない
だから分からないと言ったのに
君は、どうして、どうしてそんなにも自信たっぷりに言うの
「離れていくかもしれないと、そう思って怖かった?」なんて、分かりきったように
そうだよ、怖かったんだよ
あぁくそ、かっこわるい
怖かったなんて、美しかったなんて言ってやるもんか
そう思って「内緒」とはぐらかしても、わかっているんだろう瞳で見つめてくる君が、酷く愛おしい
こんな事なら、あのまま桜に攫われてしまえば良かった
そうしたら…
そうしたら?
…やっぱり君がいないとダメなのかもしれない
でも言ってあげないよ、そんなこと
まだびゅうと風が吹くから
また桜吹雪が舞い上がるから
今度は手を離して、意地の悪そうな顔で言ってやる
「そのまま桜に攫われてしまえ。」
そんなこと、思ってないけど。