#4 「 」
神室町は、いつも通りだった。
ネオンは眩しく、
人の声はうるさく、
夜は変わらず、ここにある。
それなのに。
俺は、足を止めた。
理由は分からない。
危険な匂いがしたわけでもない。
敵意も、殺気も――何もない。
ただ、
何かが足りない。
街を見回す。
人々は歩き、笑い、怒り、すれ違っていく。
いつもと同じ光景だ。
だが、その“上”に、
妙な空白がある。
視線を向けても、
何も見えない。
それでも、
そこに「あるべきもの」が
ごっそり抜け落ちている感覚だけが残る。
「.... ??」
胸の奥がざわついた。
昔、何度も感じた違和感。
誰かが死んだ直後の街。
何も変わらないのに、
確実に“何か”が増えている、あの感じ。
だが今は逆だ。
減っている。
神室町が、
一つ、目を失ったような――
「... 、兄さん ??」
名を呼んだが、返事はない。
風が吹く。
ネオンが瞬く。
街は何事もなかったように呼吸を続ける。
その瞬間、
ふと、背中が軽くなった。
長年背負っていた重さが、
理由もなく消えた気がした。
それが、
一番おかしい。
俺はもう一度だけ空を見上げる。
何もない。
――何も、見えない。
それでも、
この街は今も、
誰かに見られている。
なぜか、
そう思った。
end__
最終話でございます。
ここまで読んでいただきありがとうございます!