4月
上旬
__眩しい。
暖かな陽の光とともに目覚める。
自室を出て廊下を左に曲がった先にあるリビングへと向かう。
「朝ごはんできたわよ。安弥」
長狭 安弥
これが私の名前。
なんでも遠い昔の先祖が長くて狭い道沿いに家を建ててたから長狭なんだとか。
安弥っていう名前には
「安らかに安全に広く永く知れ渡るように」
っていう願いが込められてるらしい。
14歳で既にぼっちの私には荷が重い。
いつも通り眠い瞼の重さに耐えながら、温もりのある太陽の光に眠気が増えそうになりながら、朝ごはんの食パンを食べ、牛乳を飲み干す。
「行ってきます」
制服に着替えた私はそう言って家を出た。
中旬
学校に着いた。
とは言っても特段楽しみなものがあるわけでもない。
よくわからない数学、おじいさんの子守唄が流れる化学、ヒステリックおねぇさんな物理、おじさんが淡々と喋る作業系の国語。
どれもこれも私の眠気ばかりを誘ってくる。
小学校の頃は毎日が新鮮だった。
もっと楽しかったな。
あ、ねむい...
ぼーっとしてるというのはつくづく危ないものだ。
「これでホームルームを終わります」
担任の声が響き渡る。
眠っていたのかぼーっとしていたのか、おかげでホームルームの話は私には聞こえなかった。
起立をして帰る準備。
時計の針は4:30を指していた。
歩みを進め帰路に着く。
妙だ。
私の帰る道には基本、帰りが同じ方面の複数の学生がいる。
しかし今日はいない。
そんな日もあるだろうと思えば確かにそうだ。
しかし経験上そんな日はありえない。
何かがおかしい。
というか風景が違う。
いつもと違う道だ。
「あ、この道、違う方面だ」
ここで私はようやく勘違いに気づいた。
周りがいないんじゃない。私が離れてるだけだ。
そうと気づいたなら引き返す。
いつもの道に戻るなりいつもの景色と人間が見えてくる。
「ねぇ、あんた、ホームルームで寝てたよね?
先生が大事なこと言ってたから今教えるね」
一体誰だと思い振り返ると、私と帰り道が同じ方面の片山南さんがいた。
片山南さんは私とは反対でクラスでは友達が多い。
決して容姿端麗、才色兼備というわけではないが、人間的な可愛らしさを持ち合わせている。
そんな私に似つかわしくない人が、今まさに帰り道に私に話しかけている。
「どうしたの」
私はぶっきらぼうに言う。
「『今日からは帰り道に注意してください』って先生が。安弥さんも注意しててね」
片山さんは元気そうに言う。
当たり前のことをさも特殊なことのように。
適当に返事を済ませ私は家に帰った。
家では特段何かあったわけでも無しに、食事と風呂を済ませ、その日は寝た。
次の日、インターホンが私の目を開けた。
基本インターホンが土曜日の朝に聞こえることはない。
私は着替えて少しばかり緊張してドアを開けた。
そこには片山さんがいた。
「おはよう!今日は親が家にいないんだ。一人で家にいるのもつまらないし、一緒に遊ばない?」
妙だ
私は現実に友達がいない
故に休日を共に過ごす友人も存在しない
それなのに、そうなのに、
今この場で私の目の前に片山さんがいる。
とりあえず適当に返事をして待っててもらい、親に事情を話して朝食をとり、そのまま片山さんと出かけた。
その日はまずゲームセンターに行き、片山さんが大きなテディベアを獲得し、次にアニメ◯トに行き、私は推しのVtuberのアクリルスタンドを買い、その後夕方まで駅周辺のビルで買い物をした。
下旬
片山さんと初めて遊びに行った日からはや二週間。
4月も残り5日となった。
あの日以来私と片山さんの距離はぐんと近づいた。
片山さんは近づけば近づくほど不思議だった。
普段は元気で遊びにもよく行くのに時たま家に帰ることだけに集中してる時もあれば、時には家ではなく帰り道の途中の雑木林に入っていくこともある。
普段は皆と楽しくやっているが、たまにその顔に何かしらの悪意が潜んでいたり、時に不気味に笑いながらぶつぶつと何か呟いている時もある。
私は別にそんなことどうでもよかった。
ただ一緒に遊ぶことのできる友達ができたということに喜びを感じていた。
私が勝手に友達と思ってるだけかもしれない。
それでも私は一緒に遊ぶ相手ができたことに大変嬉しく思っていた。
そうして次の月となった。