目次に戻る qp氏 (qqqppp)

5月

   上旬
 その日は朝から雨が降っていた。
最近はよく片山さんと一緒に登校している。
登校中の彼女はいつも元気だ。(ま、登校後も元気だが)
しかし今日の登校中はずっと下を向いてた。
そして震えていた。
泣いてるようにも見えた。しかしその予想はすぐに打ち消された。
彼女が笑い声を押し殺していたからだった。
私はそんな彼女が気になってしょうがなかった。
学校で何か面白いことをしようと企んでいるのかとおもった。
「何か企んでる?」
私はこう聞いた。どうせなら片山さんの計画に乗って面白いことをしたい。そう思った私は特に躊躇いなしに聞いた。
しかし片山さんはそうでもなかったようだ。
笑いが一瞬で止まり、体の震えもなくなって、その場で止まった。
そして私の顔を見るや否や真顔でこう聞いた。
「私が何か企んでるように見えるの」
恐ろしかった。いつもが笑顔なだけにその時の真顔が恐ろしく黒いものに見えた。
「ねぇ、私が何か企んでるって思ってるの?ねぇ、ねぇ、ねぇ、ね゛ぇ゛!!!」
片山さんの怒鳴り声が響いた。
周りの空気が急に冷えた感覚がした。
片山さんはそれに気づいたようで
「あ、え?あ、ごめんね。怒っちゃった」
と言いその場をそそくさと去っていった。
その日は何もなかったが片山さんは基本的に笑っていた。
二つの顔で。
   中旬
 5月15日。片山さんはその日も笑っていた。
片山さんは通学中もずっと小刻みに震えながらぶつぶつと呟きながら、笑っていた。
教室はそんな状態の片山さんのことで話題が尽きなかった。
「片山さん、ずっとあの状態だけど大丈夫かな
「近づくの怖いよね」
このような会話が至る所で湧いている。
片山さんはそんなことを他所目にずっと笑っていた。
朝の通学路と同じ笑いだ。
やがて担任の先生が教室に入ってきた。
「えー、今日はみなさん学校生活で怪我のないように気をつけてください」
それでもまだ喋り続ける生徒はいる。
「静かに。あぁ、あとこのクラスから近所迷惑を起こした人がいるそうだ」
この一言でクラスがざわついた。
ただ二人を除いて。
一人はもちろん私。喋る相手なんて特段いるわけでもない。
もう一人は片山さん。席は少しばかり遠くていわゆる当たり席のような場所の席で、一番前の私からは話そうにも話せない場所だ。
彼女はそんな場所でただ一人俯いて小刻みに震えている。
それに担任が気づいた。
「片山、どうしましたか?体調でも悪いようなら保健室へ___」
担任が言い終わらないうちに片山さんがいきなり立った。
「みんなおっしまいっ♪今日でおっしまいっ♪」
そう言いながら片山さんがカバンから包丁を出して隣の席の人の首に思いっきり刺した。
燃え盛るように鮮やかな赤が静かな教室と対比されているようでより一層目に入った。
そのまま片山さんは次々と生徒を襲っていった。
教室中が混乱し誰も助けを呼べるような状態になかった。
気がつけば担任までが赤黒かった。
片山さんによる生々しい殺害現場を目撃した私はもちろん何も考えられるわけなかった。
私と片山さん以外は全員静かだった。
「ねぇ、あなた、最近私に『何か企んでるの?』って聞いたよね?もしかしたら今日の計画のことばれたんじゃないかなーって、私すっごく不安になったの」
片山さんは言った。
どうやらあの日のことが気に食わなかったらしい。
「それがどうしたの?バレたら嫌だった?」
私は聞いた。聞くしかできなかった。
片山さんに包丁を向けられているから。
「そりゃもちろん♪」
そういうと片山さんは包丁を机に置いてこう続けた。
「私は嫌だった。毎日毎日相手のために笑って相手に合わせて、相手は私じゃないのになんで他人のために動かなきゃなんだろーって、思ってたの。だから終わらせたかった。でも私には足りなかった。情報よ。だから帰り道に不審者の真似してみんなを観察してたわ。どんな人間かなーって」
そんなに嫌なら合わせなくてもいいのにと言いたかったが喉辺りで言葉を引き返した。
というかあの日の「今日からは帰り道に注意してください」っていう言葉はそういうことだったのか。
「そしてあなた、羨ましかった。私が嫌な思いをしてるっていうのにあなたは一人で過ごしていた。私の理想を取ってった。だからあなたを殺してみんなも殺してそれではっぴー!って思ってたのよ。」
なるほど。あの日急に家に来た理由はただ私に関しての調査の一環に過ぎなかったってわけか。
「私を止めるには私を殺すしかないよ」
片山さんがそういった。
別にクラスの人に情が湧くわけでもない。
片山さんに恨みがあるわけでもなかった。
ただ自分の身が危ないと思ったから、
私は咄嗟に手を前に出していた
そしてだんだん視界が光り始めた。


   下旬
気がつくと私は片山さんの首を強く締めていた。
クラスの人が全員こちらを見ている。
今までのことが夢だって気づいた時にはもう遅かった
片山さんは動かなくなっていた。

夢を現実だと勘違いして


私は人を一人殺めた


私はそのショックに4階の教室から身投げした。
コンクリートが赤く染まった。
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