NEKO
修行期限まで、あと数分。
福之助(ふくのすけ)は、雨に濡れた路地裏で一匹の子猫と向き合っていた。
震える小さな命。これまでのドタバタを反省し、福之助は静かに目を閉じる。
「最後くらい、神様らしく。……君に、一番温かい奇跡を」
福之助は、力を込めすぎず、そっと指先を鳴らした。
「いでよ、至福の一杯と、温かな居場所」
現れたのは、ただのツナ缶。
子猫が恐る恐る口に運ぶ。その瞬間、子猫の瞳がパッと輝き、細い尻尾が嬉しそうにピンと立った。
「よし……。食べてる間に、もう一つの奇跡を」
福之助は、路地裏の入り口に向かって、さらに優しく光を放った。
すると、雨宿りを求めて偶然通りかかった、一人の優しそうな女性が立ち止まる。
「あら……? こんなところに、可愛い子が」
女性は、夢中でツナ缶を食べている子猫を見つけ、そっと傘を差し出した。
「お腹空いてたのね。……うちに来る? 寂しくないようにしてあげるから」
女性が抱き上げると、子猫は満足そうに「ニャーン」と喉を鳴らした。
その日福之助は神様に呼び出しを受けた
(ギリギリ合格だった)
派手な騒ぎも、勘違いも、もうない。
ただ一匹と一人の幸せを、遠くから見守る本物の神様の顔をして、福之助は天へと帰っていった。
(完)