目次に戻る てみ

鶴と魔法



 一人目のターゲット、佐藤を笑顔にした福之助。
「ふふん、要領はつかんだぞ(多分)。次はもっと大物を幸せにしてやろう!」
 二番目のターゲットに選んだのは、超高層ビルに本社を構えるIT企業の社長、巌(いわお)。
 彼は社員から「鉄面皮」と恐れられ、会社設立以来、一度も笑った姿を見せたことがないという。

「ふむ、巌社長は仕事ばかりで心の余裕を失っているようだな。ならば、最高に優雅な『癒やしのティータイム』をプレゼントしてやろう!」

 福之助の作戦はこうだ。
 社長室の窓際に「青い鳥」を召喚し、その美しい歌声で社長の心を癒やし、極上の紅茶を一口飲んだ瞬間に、社長がふっと微笑む――という完璧なシナリオ。

 福之助は指先をパチンと鳴らした。
「いでよ、癒やしのメロディ!」

 しかし。
 福之助の放った「幸運の光」は、豪華なシャンデリアに反射し、机の上に置かれていた「全自動シュレッダー」を直撃した!
 バチバチッと火花が散り、シュレッダーが異常な高速回転を始める。

「な、なんだ!? 壊れたのか?」
 巌社長が慌てて止めようとした瞬間、シュレッダーの排出口から、粉々になるはずの書類が、なぜか**「折り紙の鶴」**の形になって猛烈な勢いで噴き出した!

「わわわっ! 何だこれは! 鶴が、鶴が襲ってくるぞ!」
 狭い社長室の中を、数百羽の紙の鶴が嵐のように舞い踊る。
 福之助は顔を青くした。
「やばい! 癒やしの青い鳥どころか、凶暴な白い群れを召喚してしまった!」

 さらに、福之助が慌てて魔法を修正しようとしたところ、今度は社長室の大型扇風機がフルパワーで回転を開始。
 舞い踊る鶴、吹き荒れる暴風。
 巌社長は、飛んでくる紙の鶴を必死に手で払い落とそうとするが、その動きがまるで「見えない敵と戦うカンフーの達人」のようになってしまった。


 キレッキレの動きで紙の鶴を撃墜していく社長。
 その時、秘書がドアを開けた。

「失礼します、社長。次の会議の……って、えええええ!?」
 秘書が見たのは、猛烈な風の中、真剣な顔で紙の鶴を空手チョップでなぎ倒し続けている、シュールすぎる社長の姿だった。

「しゃ、 社長、何してるんですかそれ! 鶴の拳ですか!?」
 秘書がこらえきれずに爆笑。
 すると、必死に戦っていた巌社長も、自分の姿を鏡で見てしまい――。

「私は一体、紙相手に何を熱くなっているんだw!」
 社長の喉から、数十年ぶりの豪快な笑い声が飛び出した。


「おっ、社長が笑った! ……けど、会社が紙だらけだ。後で怒られるのは僕かな……?」

(第2話 完)
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