〜勇者...我と戦うには其方の人生は短すぎるの巻〜
魔王「勇者よ、その弱さでは我に勝てぬ!今回は見送ってやろう。また鍛えて出直して来い!」
勇者「ぐぅ...次来たらお前を必ず倒す!」
ー3年後ー
魔王「おっ、強くなったな!でもまだまだ我を倒すには程遠い!」
勇者「くそっ、今度こそ!今度こそ絶対にやってやるからな!」
ー5年後ー
魔王「随分と貫禄がついてきたな。でもまだ我には届かぬぞ?」
勇者「そうか?でもだいぶダメージを与えれるようになったんだがな」
魔王「そうだな。我も前よりも少々踏ん張ったな」
勇者「また鍛え直して挑んでやる!」
ー7年後ー
魔王「久しぶりに戦ったが随分と強くなったな。我も本気で戦わなければならなくなったな」
勇者「あぁ、でも俺はまだお前を倒せてない」
魔王「我の方が強いからな。はっはっはっ」
勇者「でもまた鍛えて鍛えて、俺は絶対にお前と戦って勝ってやる!」
魔王「いつでも来い!」
ー9年後ー
魔王「随分と老けたが、まだそこまで動けるのか、なかなかやるな」
勇者「お前と戦いたくてな、お前に勝つまでは体を動かせるようにしておいてるんだよ」
魔王「なんと、我も戦いたい。ここまで我と対峙できたやつはそうそうおらんからの。楽しいぞ」
勇者「あぁ、俺もさ」
ー11年後ー
魔王「我に本気を出させたのはお前が初めてだ」
勇者「へっ、俺も年でだいぶ動かなくなったが、それでもお前に本気を出させることができたんだな」
魔王「歳、か。我も日々年々年老いていくのだが」
勇者「俺らよりも遅いんだろ?老化が」
魔王「あぁ」
勇者「俺が先に死なねぇように死ねぇとな。俺が先に死んだらお前悲しむだろ?」
魔王「悲しむのがなんなのかよくわからんが、我はお前をいつでも歓迎し、その時はいつでも挑んでこい!」
ー13年後ー
魔王「どうだ?最近の調子は」
勇者「お前を倒すためにかれこれ何十年も挑んでは鍛えて挑んでは鍛えてを繰り返してきたが...もうそろそろその余裕がなくなってきておる」
魔王「我を倒すのはどうしたんだ」
勇者「わしが、生きておるうちに、達成したい、もんじゃけどなぁ」
魔王「・・・」
勇者「安心せい。また来る。そして、その時こそ、お前の、命日...ゲホッゴホッ」
魔王「勇者、大丈夫か?無理はするんじゃないぞ。我とここまで戦ってくれるのはお前だけなんだからな」
勇者「あいよ」
ー15年後ー
魔王「そんな腰が曲がった状態で我とここまで戦えるとは...」
勇者「最近は息もしやすくなって心穏やかに過ごせておる。じゃが足腰が弱ってしまって魔王城まで歩くのも疲れる」
魔王「そしたら我がお前のところに行ってやろうぞ」
勇者「それだとわしの庭の野菜畑が荒れるじゃろう」
魔王「ならダメだな」
勇者「こんなおいぼれと闘うてくれてありがとうな。そして話をしてくれて...ありがとうな。魔王、いやエルスム」
魔王「名前で呼んでくれるとは嬉しいな。勇者、ではなくアルスカイよ」
勇者「お主もわしを名前で呼んでくれるのかい」
魔王「当たり前だ。我にとってお前はかけがえのない友人なのだからな」
勇者「友人、か。嬉しいな、最近は旧友も次々に旅立っていくからな」
魔王「・・・」
勇者「また、お前と戦って、その時には勝ちたいのぉ」
魔王「っ!.........」
ー??年後ー
魔王「お前...我と戦って勝つ約束はどうしたのだ...」
石「・・・・・・」
魔王「お前がいなくなって我は最近退屈なのだ」
石「・・・・・・」
魔王「せめて最期くらいは、最後くらいはっ!!......!
...目から汗が出ておる...これは、これはなんなのだ...」
石「・・・・・・」
魔王「我はこの酷く辛い思いを言い表せない...ある日お前が言った悲しいというのはこういうことなのか、アルスカイ」
石「・・・・・・」
その時、石が少し前に倒れた。
魔王は石に祈りを捧げ、そして、花を添え、静かに去っていった。
また新たな勇者を迎えるために