プロローグ
第1話 / 全1話 · 1,832字 · 約4分
第一話
いつもの依頼「うーん....」ギルドの依頼掲示板の前で,ひかるは腕を組んでいた。右を見ても依頼書。左を見ても依頼書。
上も下も依頼書。あまりの量に目が回りそうだ。
ひかる「多すぎない?」
天「毎回言ってるね。」ヴィータ「学習しない。」
ひかる「したよ!」ヴィータ「してない。」
ひかる「してる!」
天「ふふっ。」朝のギルドは今日も賑やかだった。依頼を探す冒険者,受付へ並ぶ人たち,大声で仲間を呼ぶパーティーあちこちから話し声が聞こえてくる,
冒険者「第一層なら今日中に終わるだろ。」
冒険者「報酬は山分けな。」受付嬢「次の方どうぞー!」ひかるは掲示板を眺めながら唸った。ひかる「討伐。」
ヴィータ「却下」ひかる「なんで〜?」
ヴィータ「昨日も討伐。」
ひかる「採取」ヴィータ「昨日も採取」ひかる「護衛」
ヴィータ「前に迷子になった」
ひかる「それは依頼主が迷子になったんだよ!」
ヴィータ「ひかるも迷子になった」ひかる「……」
ヴィータ「事実」ひかる「天お姉ちゃん!」
天「うん、迷子だったね」ひかる「味方いない」その時。一枚の依頼書がひらりと床へ落ちた。誰かがぶつかったらしい。ひかるはしゃがみ込んで拾い上げる。ひかる「はい。」少女「あっ。」目の前にいたのは、自分たちと同じくらいの年齢の少女だった。淡い茶色の髪。少し慌てた様子で依頼書を受け取る。
少女「ありがとう。」ひかる「どういたしまして。」少女はぺこりと頭を下げると、そのまま足早に去っていった。ヴィータがその背中を見送る。
ひかる「知り合い?」ヴィータ「知らない」
天「新人さんかな?」
ひかる「頑張ってほしいね。」ヴィータ「そうだね」ひかるが思わず振り返る。
ひかる「今同意した?」ヴィータ「したよ」
ひかる「珍しい。」ヴィータ「たまにはね」結局、三人は依頼を探し続けた。十分後。ひかる「決まらない。」
ヴィータ「知ってる。」
天「予想通り。」
ひかるは掲示板の前でしゃがみ込んだ。完全に行き詰まっている。その様子を見ていた受付嬢が苦笑する。受付嬢「何かお困りですか?」
ひかる「いっぱいありすぎて分からなくて……。」受付嬢「ああ。」納得した顔。どうやらよくあることらしい。受付嬢は何枚か依頼書を抜き取った。
受付嬢「それならこの辺はどうでしょう?」
ひかる「おぉ。」天も覗き込む。ヴィータも横から見る。
【薬草採取】場所:迷宮第一層報酬:銀貨十五枚
【魔石回収】場所:迷宮第一層報酬:銀貨十八枚
【迷宮内調査補助】場所:迷宮第一層報酬:銀貨二十枚
ひかる「迷宮内調査?」
受付嬢「最近、第一層で地図に載っていない通路が見つかることがあるんです。」ヴィータ「へぇ。」天「珍しいね。」
受付嬢「危険なものではないと思いますが、一応調査中で。」
ひかるの目が輝いた。ヴィータが嫌な予感を覚える。天もなんとなく察した。ひかる「これ!」
ヴィータ「だと思った。」
天「好きそうだもんね。」
ひかる「だって楽しそうじゃん!」
受付嬢は少し笑った。
受付嬢「実際、冒険者の皆さんにも人気ですよ。」依頼書を受け取り、受付を済ませる。その間もひかるは上機嫌だった。
ひかる「隠し通路とかあったらどうする?」
ヴィータ「帰る一択だね」ひかる「なんでぇ〜」
ヴィータ「面倒だからだよ」
天「宝箱くらいならあるかもね。」
ひかる「ほらぁ!」
ヴィータ「天お姉ちゃんが言うなら少し期待だね」
ひかる「私が言った時との温度差えぐ!」天が笑う。
ヴィータは少しだけ口元を緩めた。ギルドを出る。外は雲一つない晴天だった。ひかるは大きく伸びをする。
ひかる「よーし!」
天「張り切ってるね。」
ヴィータ「転ばないでね。」ひかる「転ばないから!」そう言って歩き出した瞬間。石畳の段差につまずいた。ひかる「わっ!?」
天「ひかる!」
ヴィータ「早かったね」ひかる「まだ五秒だよ!?」天は慌てて支えながら笑っている。ヴィータは呆れたようにため息をついた。そんな三人の姿を、ギルドの二階から誰かが見ていたことに気付く者はいなかった。窓際に立つ人影。その視線は一瞬だけ、ひかるへ向けられる。しかし次の瞬間には姿を消していた。ひかるたちは何も知らない。これから向かう迷宮での出会いが、自分たちの冒険を大きく変えることを。