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M学SS
寝歌「このメンツで勉強とかできるわけなくない?」
藤本「意外とできるかもしれない」
イブキ「教えられる側のお前が何言ってんだよ」
童「まあなんとかなるだろ」

ライダー部Ⓜ️の勉強会
#M学SSコンテスト
5,618字 約12分 90 PV

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4人(+1人)で楽しく勉強会

5,618字 · 約12分
〔No side〕
「寝歌ぁ〜〜助けてぇ〜〜!」
そう言って絵を描いている最中の寝歌に縋り付くのは、このライダー部内で随一に成績の悪い藤本。
尤も、万魔殿議長のイブキや風紀委員会の中でもそこそこの権力を持つ童の成績が目に見えて良いため、平均的な藤本の成績が過小評価されているのも理由の一つだ。
「ちょ、とりあえず話聞くから離してっ。俺今絵描いてるん――あーもうズレた!」
「えっ、ごめん⋯⋯」
途端にしょぼくれる藤本。
その肩に愛用の白いパーカーはなく、第一ボタンを開けたシャツにゆるめたネクタイという比較的涼しそうな格好をしている。ただ、それでも暑そうに胸元でシャツを掴んでぱたぱたと仰いでいる。
それもそのはず、今は8月という猛暑の真っ只中。
つまり、夏休みだ。

  * * *

普段は駄弁ったり暴れたりしているだけだが、これでも『仮面ライダー部』という一つの部活として夏休み中でも活動があるわけで。
ただ、特撮の良さについて語り合うのが主な活動内容だが、全員た自由奔放、勝手気ままにしているからか、いつも通り部室に集まったはいいものの、各々『Mついーと』やらお絵描きやらてんでバラバラなことをしていた。

「⋯⋯課題?やだよ俺もまだ終わってないんだから。イブキか童に頼んで」
懇願する藤本を一蹴し、またすぐにお絵描きに戻る寝歌。
「イブキ!!」
「えぇ⋯⋯」
名を呼ばれた彼がスマホから顔を上げた。その目にはあからさまな呆れが映っている。
「じゃあ童」
「じゃあってなんだよじゃあって」
童を半笑いを浮かべて、読んでいたページに栞を挟んでから本を閉じた。
「なぁ寝歌、お願いだからさー」
「いや俺ら二人とも断ってねぇだろ」
「俺はやんねぇぞ?」
「え?」
藤本はあっちを向いたりこっちを向いたりと忙しい。
「だって俺説明苦手だし」
「でも俺らの中で一番成績良いのイブキだろ」
「そりゃ問題は解けるけどさ、解説はできねぇよ。教えんのなら俺より童の方が向いてるだろ」
「向いてねぇよ」
童とイブキが謙遜で小競り合いを始める。
そもそもの発端である藤本はと言えば、あ、とかえ、とか蚊ほどに小さい声を発しながら二人を交互に見る。
お互いを褒めているだけなのに殺伐としている空気、その空気感を生み出させてしまって申し訳なくなっている空気。もし部外者がいたら随分息がしづらそうな空間だ。
そこに我関せずを貫き一人黙々と絵を描いていた寝歌が台パン――机に手をついて立ち上がる音が響いた。
「もーわかったわかったから、じゃあこうしよう!」

「ということでっ。仮面ライダー部、真夏の激アツ!勉強会!
「「「いぇーい⋯⋯」」」
『善は急げ』というが、これは誰にとっての善なのだろうか。
発案者である寝歌以外の三人は遠い目で虚空を見つめた。

「みんなで勉強会しよ?」
「は?」
「え?」
「なんで?」
三人揃いも揃って素っ頓狂な声を出す。
「てか、俺は課題もう全部終わらせたから出る理由ねぇじゃん」
イブキは不服そうに口を尖らせる。
「別に何しててもいいから、藤本のわかんないとこだけ教えてやってよ」
「えぇ⋯⋯俺そこまでしてもらわなくても、マンツーマンで教えてもらえればいいなと思ってたんだけど」
当の藤本は申し訳なさそうに言うが、寝歌が「だって俺はそんなに頭よくないし、イブキは難しい言葉ばっか使うし、童は甘やかすからマンツーマンなんてできるわけないじゃん」と鋭い指摘を入れた。
「俺そんな甘やかしてるかなぁ?」
首を傾げる童に、「俺でもわかるくらいに甘いぞ」と藤本が肩を叩く。
「とーにーかーく!俺らは4人いないとバランス保てなくて崩壊するからっ。明日1時にここに集合!」
「「「ハイ」」」
有無を言わさぬ寝歌の剣幕に、反射で首を縦に振る。
「⋯⋯明日ァ!?」
「崩壊ってなんだよ⋯⋯」
冷静になるとおかしい点ばかり。三人は呆れと困惑と驚きが混ざって最早顔芸ではないかというほど顔を顰める。
「来なかったらペナルティだからね!」
「お前フォーゼだろ⋯⋯」

  * * *

「いやあのさ、こういうのって友達の家でやるから楽しいモンなんじゃねぇの?」
「心が躍らない⋯⋯」
半目の童、明らかに憂鬱そうな藤本、無言で勝手に藤本のワークをパラパラと流し見るイブキ、扇風機をつける寝歌。
意外にも乗り気な童が一緒になってイブキの手元を覗き込むが、「あ、ちょ、俺のワーク返せよ!」と取り上げられた後二人仲良く拳骨を喰らった。

「俺もわかんないとこあったら訊いてもいい?」
「いいよー」
「寝歌は地頭いいから多分考えればわかると思うけどな」
「イブキに頭いいとか言われんのは皮肉でしょ」
「なんでだよ褒めてんだから素直に受け取れよ」
こんな絶え間なく喋っていて、勉強などできるのだろうか。
童はノートパソコンを立ち上げ、イブキはスマホを取り出し、寝歌はヘッドフォンを、藤本はイヤホンを装着。
前言撤回。
一瞬にしてライダー部の部室から音という音が消え去った。
否。扇風機以外の音が消え去った、だ。

「童ー?」
「はいはい」
藤本に呼ばれた童は、ノートパソコンの画面の角度を少しだけ下げてから、藤本の指す箇所を見る。
「あー、それかぁ。ただの応用だから移項すれば公式でいけるぞ」
「⋯⋯こうか?」
「そうそうそう。そしたらもう解けるだろ?」
「うん。ありがと」

〔藤本side〕
「わらわ――」
本日何度目か、隣に座る者の名前を呼ぼうとした藤本の口の動きが止まる。
彼の目はノートパソコンの画面にくぎ付けになり、話しかけ難いオーラを纏っている。
「イブ――」
カウチの方を振り向くと、そこには肘掛けに頭を乗せて寝ているイブキの姿があった。
⋯⋯まぁ、アイツも忙しいし疲れてるんだろうな。
一瞬そう思った後で、「いや、今夏休みか」と思い直す。
仕方なく向かいに座る寝歌の肩をチョンチョンとつつくと、ワークを彼女の方へ向けて端を見やすいように差し出す。
『童は集中してるしイブキは寝ててわかんないとこきけないから教えて』
寝歌はそれを見ると、『ちょっと待ってて』と同じようにノートに走り書きし、そっと部室を出て行った。
藤本は寝歌の突飛な行動にもワークの問題にも首を捻りながら、一人待った。

  * * * 

「え、ちょ、なになに?」
寝歌の小さな声と共に、柔らかいテノールの声が耳に入って、思わず顔を上げる。
「qp?」
目の前に立っていたのは、風紀委員長代理、qpだった。
「は?なんでqpが?え?」
困惑してシャーペンを落とす俺を他所に、寝歌はてへ、と舌を出す。可愛い。
「俺そんな交友関係広くないし、勉強教えてくれそうな人って考えたらきゅぴしかいなくてぇ⋯⋯」
なんで交友関係広くないのに風紀委員長代理とかいうすげぇ奴と仲良いんだよ⋯⋯。
「ありがたいけどさ、qpの都合は大丈夫なのか?仮にも風紀委員長代理だろ?」
仮にもというか、今後風紀委員長は彼にしか務まらないと言えるほど立派に仕事をこなしている。
「いやまぁ、今日は遠征とかで教師たちが出払ってて、今日だけ僕が学校の戸締りとかを任されたってだけで、すごい暇してたし。で、どこがわからないの?」
童の向かいの椅子に浅く腰掛け、机に肘をついてこちら側に身を乗り出す。
と、そこで童がようやく画面から離れ、椅子の背凭れに体重を預けた。
「あ、童だ。やあ」
qpは屈託のない笑顔でひらひらと手を振る。
「きゅぴ?なんでここに?」
童はパチパチと目を瞬かせ、風紀委員としては上司でもあるqpが何故ここにいるのかと驚き、彼を凝視する。
「寝歌に呼ばれてきたんだよ。童は集中してて声かけれないし、イブキは寝ちゃったから代わりに勉強教えてくれって」
「え、あ、ごめん!きゅぴ忙しいだろ!?言ってくれりゃよかったのに⋯⋯」
童は申し訳なさそうに手を合わせる。
「僕は暇だったし、こうして童や寝歌の顔も見れたし、頼って貰えて嬉しいよ。それに⋯⋯ね」
qpはポケットからスマホを取り出すと、イブキの意外にあどけない寝顔をパシャリ。
「これは今度交渉材料として使おうかなー」
ふふふ⋯⋯と悪い笑みを浮かべ、ルンルンのまま俺の方へ向き直る。
「じゃあ気を取り直して勉強しよっか。寝歌もわからないとこがあったら僕に訊いて。童はちょっと休憩したらどう?」
切り替えが早くて、幾数人にもすぐさま指示を出せる。これがqpが信頼される所以なのだろうなとつくづく思う。
「藤本?やらないの?」
「ごめん、やるやる。ここがわかんなくてさ⋯⋯」

  * * *
 〔No side〕
「イブキー。イブキ、起きろー」
寝歌がイブキの肩を揺する。イブキは深い眠りに入っているのか、「んん⋯⋯」と小さく呻いて寝歌の手に頭を乗せ、眠り続ける。
「なっ⋯⋯」
寝歌は「なんで起きないんだコイツ」とでも言いたげな目をする。
その横で藤本がビルドドライバーを腰に当て、ガチャン!というベルト装着される音を聞いて童がバッと振り向く。
「わー、ビルドはダメビルドはダメ!⋯⋯せめてグリスにしよーぜ?」
藤本の目の前で手をわたわた振り、フルボトルを頭の横に持ってきて早速振ろうとする手を制す。
「⋯⋯どっちもダメだよ!?」
数秒の沈黙の後、寝歌がツッコむ。
普段ならイブキがボケ、寝歌がボケ、藤本がボケ、童がツッコミという立ち位置なので、不慣れな気まずさがあった。
「うぁぁ〜⋯⋯」
イブキが奇声と共に目を開け、すぐにまた眩しそうに瞼を閉じた。
「あごめん、起こしちゃった」
「合ってるぞそれで、起こせばいいんだよ」
童がボソっと呟く。ツッコミ復活。
「イブキ、今すぐ起きるか僕にお姫様抱っこで運ばれるかどっちがいい?ごめんだけどそろそろ戸締りしたいんだよね」
qpも話しかけながらひょこっとイブキの顔を覗き込む。その手で指した先にある時計の針は7時を示している。
「!? qp!?」
イブキは部室内にqpがいることに驚いて飛び起き、ぶつかりそうになったqpが「わお」と仰け反る。
「お前が寝ちまったから代わりに勉強教えて貰ってたんだ。さ、行くぞー」
藤本がカバンを持って出口の方へ歩いて行く。寝歌、童、qpもそれに続いた。
「ちょ、待てよ!」
イブキも慌てて荷物をカバンに放り込み、カバンを引っ掴んで4人の元へ駆け寄る。戸口で待っていた彼らと共に、歩き出した。

  * * *

「きゅぴ?戸締りは?」
「玄関以外は既にしてたから、出る時に完了したよ」
のんびり話している童とqpと、先を行き仮面ライダーの話をしているイブキ、藤本、寝歌。
藤本がふと振り返り、「もうこんな時間だし、このまま5人でご飯行こーぜ」と月を背に言う。
「いや、僕は遠慮しとくよ。ライダー部じゃないし。4人で楽しんで」
「何言ってんだよ。きゅぴには俺が奢るから、一緒に行こうぜ?」
童がqpの肩に手を置いて笑顔を向けた。
「やった!童ありがと!」
寝歌が彼の背中を叩く。
「いや、きゅぴにはっつったろ。寝歌には奢んねぇよ」
「ケチ〜〜〜」
「最近いい店知ったから、そこ行ってみね?割と近いし」
イブキがスマホで営業時間やら定休日やらを調べながら提案。
「いいじゃん、どこのなんて店?」
「nascita。ここから歩いて1時間」
地図アプリで店の場所を表示し、画面を皆の方へ向ける。
「遠いだろっ。てかnascitaは店名がアレすぎて気になるけど逆に行きたくねぇよ⋯⋯」
童のツッコミが夜なので声は控えめに炸裂。
「ちなみに俺も行ったことはない」
「余計こえぇよ」
「安い店でいいじゃん。サイゼでよくね?」
藤本の指す先、100m程進んだ場所にサイゼリアがある。
「そうしよう。僕には童が奢ってくれるらしいし、安い方がいいよね」
qpが優しさと意地悪さが7:3程で混じった感情の読めない笑みを浮かべる。
「きゅぴ優しい大好き!」
童がqpに抱きつこうとするが、「童は僕の親友だから」と首根っこを掴んで阻止する。
「んじゃ、ここからサイゼまで競走な!」
言い終わりざま藤本が走り出すが、言い出しっぺの彼はともかく、何故寝歌まで駆け出すのか。
イブキは「夜だからあんまうるさくすんなよー。てか待て!」と追いかける。
「童」
「ん?」
3人のやり取りを見て微笑んでいた童が名前を呼ばれてqpを見る。その奥には月が煌々と輝いており、でもどっちかというときゅぴは太陽っぽいよな、と小さくボヤいて苦笑い。
「月が綺麗ですね」
唐突にかの有名なセリフを口に出すqpに、童は目を見開く。
「⋯⋯僕に月は見えません」
「え?大丈夫?童って盲目だっけ?」
「引っ掛けやがったなっ!? 酷いなおい」
じっと恨めしそうな目で見上げる彼に、「ごめんね」と笑いながらだが素直に謝る。
「おーい、2人とも何やってんだよ、早く来いよ!」
「シー!! 藤本、今夜だから!」
「お前も大概だぞ寝歌⋯⋯」
童とqpは顔を見合わせてふはっと軽く噴き出してから、3人の元へ走り寄った。

「わらわー、パフェ半分こしよ?」
「いいね、しよう。⋯⋯夜にファミレスのパフェは重くね?」
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この作品への感想

(´-ω-`) 🍍😎💕 2026/07/13 09:52
とっても好きです なんというか、尊い。
寝歌 2026/07/12 23:55
好きだ!!!!
何だこれ、好きすぎる
らぶ、びっくらぶ
qp氏 (qqqppp) 2026/07/12 22:23
好きだーーー!!
好夜 2026/07/12 18:36
好きすぎて滅
好夜 2026/07/12 18:36
好きすぎて滅