祭り|8/15
第1話 / 全1話 · 1,138字 · 約3分
俺が生まれる。俺は赤ちゃんだった。
そこから何年かの時が経ち、今日が来た。今日は待ちに待った祭りである。
しかし、俺はA街に引っ越したばかりなので、A街の祭り自体初めてだった。
聞くところによると、豪勢な花火のお祭りらしい。
俺は家と学校の距離が遠いため、寮で暮らしていた。だから外が暗くなり、祭りの時間になると学校の校庭に出た。なんでも、その祭りは学校からでも十分楽しめるらしいのだ。
しばらくすると、近くで花火が上がった。想像よりも小規模だった。まあ、小さなまちだからこんなもんだろうと納得した。花火の煙が、やけに人に見えた。
しばらく校庭の端のほうに座り込み、花火の余韻に浸っていた。視界に飛び込んできたのは先ほどの人型の煙である。とんでもなくびっくりして、俺は座っているのにコケた。
よくよく見たら、煙じゃなくて、ねぶた祭りのような人形であった。
多くの人に俺の恥ずかしいところを見られてしまった。俺は部屋に行き、ベランダから街の様子を眺めた。先ほどのねぶた人形は着れるらしい。イルミネーションを全身に巻きつけて走っているのが見えた。それから逃げるねぶたイルミネーション人間もいた。祭りの余興か何かで、鬼ごっこのような演目なのだろう。
俺は妙に納得して空を仰いだ。
ブツンという大きな音が聞こえた。
下を見ると、ねぶたイルミネーション人間の光も、校庭のイルミネーションも消えて、街の灯りも消えていた。
俺は寝ようと部屋の中に戻った。オレンジの薄暗い常夜灯が灯っている。多分、先ほどの停電とは区域が違うのだろう。だから寮の電気はついているのだと納得した。
部屋には4つのベットがあり、一つは俺のである。他の三人は寝ているらしい。それもそうだ。もう時刻は12時をとっくに過ぎている。
俺も寝ようと思い布団に目をやると、誰かが寝ているらしい。きっと祭りで酔っぱらったおっさんが寝ているのだろう。俺は叩き起こそうと布団をめくった。
体がなかった。俺は内心おったまげたが、腰はなぜか抜けなかった。なぜなら俺には俺のベットを取り返すという重要なミッションがあるからだ。
残っている頭部分に目をやると、赤ん坊だった。赤ん坊は頭がつぶれ、頭部の影だとばかり思っていたそれは、よく見ると赤ん坊の頭部から流れ出る黒い液体でぬらされていたものだった。
俺は何か見覚えがあると思った。何か、何処かが懐かしかった。俺は少し考えるために視線を持ち上げた。
するとさっきまで寝ていた3人が立ち上がってこちらを見ている。友達じゃなかった。俺の両親と兄だった。
急に思い出した。この赤ん坊の、この顔を。
この赤ん坊は俺の幼少期の姿だった。