明るくて楽しい日常
これは、今から約十年ほど前の話です。
その日も、いつもと同じでした。
保育園から帰ってきて、ランドセルの代わりみたいな
小さなリュックを置くと、少しも休まずに家を飛び出す。
向かう先は、決まっていました。
ピンポーン。
「紗良でーす。お兄ちゃんとお姉ちゃん、いますか?」
そこは、兄と姉の家。
この頃の私は、ほとんど毎日のようにここへ
来ていました。
「紗良ちゃん!また来たの?」
扉を開けた姉は、少し驚いた顔をしながらも、
いつも通り優しく笑ってくれます。
“また来たの?”と言いながら、その声には迷惑そうな色
なんて少しもありませんでした。
「うん、また来たよ!今日は何して遊ぶ?」
私はそう言ってから、ふと思い出したように聞きます。
「……お兄ちゃんは?」
「お兄ちゃんはね、今高校にいるよ。
だから今日は、二人で遊ぼっか」
最近、兄は高校生になって、前みたいには遊べなくなっていました。
それでも姉は、変わらず私の相手をしてくれて、そのことがたまらなく嬉しかったのです。
それからの時間は、特別なことなんて何もありません。
おしゃべりをして、遊んで、笑って。
ただそれだけの日々が、当たり前のように続いていました。
そして私は、いつの間にか思っていたのです。
——この楽しい日常は、ずっと続くんだって。
疑いもせず、それが当然だと、勘違いしたまま。