まるで恒星
第10話 / 全11話 · 1,570字 · 約4分
黒使 兎猫という存在は異質だった
天使とは元来、魔法を得意とし、一即多、多即一。乱れの少ない思考の一致による、ギリギリまで極められた社会性を持つ。
他は他でありながら私であるという信念を持つものが多いからこそ、上下が分かれていながら関係性のトラブルがあまりに少ない。
容姿においても、美しい純白の髪を持つものが多く、基本的に色素の薄い髪と神秘性を秘める瞳を持つものが多い。
だが
だからこそ異質だった
黒い髪。緑の瞳。なにより、他と私を全くの別物として区別することによる個人としての意思。
神秘的とされるその緑さえ、忌々しい黒髪と合わさることによって異形性を放つ。
独創性に長けていると言える彼女は、既存魔法を扱うことを酷く苦手としていた。
その代わり、新しい魔法を生み出すことを得意とし、度々学校に迷惑をかけていた。
炎を出す魔法の授業の後の休み時間に、木だけを燃やす炎を出す魔法を作り出して校舎を燃やしたり。水を出す魔法の授業中に川の水を増やすだけの魔法を作り出し川を増水させたり。
必然というべきか、当然というべきか。彼女は周りに誰もいなかった。
まるで、唯一無二なんて個性がこの世に存在することを知らしめるような存在だった。
私は彼女と似た姓を持っていた
だが私と彼女は正反対だった
まるで天使を体現したようだと言われる私と、
まるで悪魔が手違いでやってきたようだと言われる彼女
優等生の私と、
劣等生の彼女。
ある日、魔法成績の試験結果が出た日。
私は初めて、二位をとった。
一位は黒使兎猫だった。
なぜ?どうして彼女なの?
劣等生なのに、不適合なのに、悪魔のようなのに!
彼女は、魔法が認められ一位となった。
既存魔法の熟練度を示す試験だとは、確かに定義されていなかった。
彼女が披露した魔法は、今まで彼女が作り出してきた不出来で醜く使いどころのないものとすべてが違った。
天使も生き物だ。
呼吸をして、内臓を働かせて、物を覚えて、物を忘れて。
記憶というものがある。
まるで星を降らせるような、エフェクトと呼ぶにふさわしい煌めきで。
本人さえ忘れている記憶を、映像として手の前に映し出してみせた。
___つまり、記憶干渉魔法。
思いつくものはいただろう
作り出そうとしたものもいただろう
その誰もが、彼女の技術力に遠く及ばなかっただけで。
私が考え付きもしなかった魔法を、彼女は作り出した。
振り返れば、彼女が今まで作り出した意味のない魔法は、限定的であれど確かに既存魔法の強化種だった
光を放っているのはその魔法のはずだった
その魔法に降りかかる星のはずだった
だけど私には、まぎれもない彼女自身が輝いているように見えた
その実績が認められ、彼女は四枚羽の天使となった。
いや、未発達の羽を含めれば六枚羽か。
彼女は私と同い年のはずだ
彼女は私より成績が低いはずだ
彼女は私より醜いはずだ
私は輝いてるはずだ
私は天使の代表のはずだ
私は憧れの的のはずだ
それなのに、なぜ彼女は輝いている?
まるで、まるで恒星じゃないか。
私は天使として、美しく、輝いているはずなのに
私では、惑星どまりだと突きつけられた気がしてならなくて。
独創的だから?
唯一無二だから?
どれも正解だろう。そして、どれも間違っているだろう。
きっと、彼女が彼女だからであり、私が彼女でないからだ。
なら、彼女になればいい。
せっかく似通った姓を持つのだから
黒い天使ではなく、白い天使として。
私が彼女になれば、きっともっと輝けるはずだから。