哀れな人
まさか彼女の方から誘ってくるとは。
「大晦日通話して年越すぞ。」
連絡があった時はどうせ夢だとそのまま寝たが、寝起きに再確認すると本当だった。
時は12月31日、新人大会もクリスマスも超えて大晦日を迎えていた。
そして本田は大晦日に通話することになった。19:00からだった。
本田は知っていた。
彼女は睡魔への抗体がないということを。
22:00には既に寝ていた。
可愛かった。
マイクもカメラもオンだったので寝顔も寝息も摂取し放題だった。
天国だった。
初日の出も観察し、お茶を飲んでスッキリした8時頃、大きな音で彼女を起こした。
ブチギレられた。
そこがまた可愛い。好き。
そして彼女は「寝る。」と一言残して通話を抜けた。
そして正月の初夢が覚めたかのように始まった三学期。
いつの間にか3月になっていた。
これだけでも充分怖いのだが、本当に怖いのはここからである。
3月某日には春の演奏会と称して引退した三年生に楽器を吹かせるためのイベントがあった。
その年は三年生が六人しかおらず、直属の三年生がいなくて誰とも関わりがなかった本田はキョドっていた。
先輩は言った。
「まあ私が一年生の頃は三年生多くていろいろ分散しがちだったけど今年は六人だけだから沖縄の私の分もしっかり感謝伝えるんだよ〜」
「言われなくてもそれはわかってますけd…え…?」
「どうした本田。」「沖縄行くんすか…?」
「言ってなかったっけ。」「初耳です。」
「まあそういうことだから私の分も頑張って。」「急に言われても無理っすよ。」
「イケるイケる信じてるよ本田(棒)。」「えぇ………」
こうして先輩は本田を置いて飛び立った。
しかし意外にも本番は成功。
サプライズも成功して生徒だけでなく観客まで泣く始末。
深い思い出を作っておくべきだったと後悔している本田をよそに、演奏会は幕を閉じていた。
しこたま先輩を恨んでいるといつの間にか中一人生は終わっていた。