全部下手な人
4月某日、本田は中二になっていた。
そして仮入部期間が始まった。というより始まってしまった。
どうせ吹部に入る男子なんていないしいても物好きだろうなとか思ってた。
なんか三人入ってきた。
三年の男子も卒業したし二年の男子が引退するまで待てば男子一人のハーレムだからもういっそのこと男子なんて来なければいいのにとか思っていた。
なんか三人入ってきた。
こうなったら仲良くするしか無いと思った。
距離感がアキレスと亀すぎて泣いた。
こんな状況でも最適解を教えてくれたのは彼女だった。
「リア充バレしてるんだからこんな可愛い美少女が彼女だって自慢でもしとけ。」
確かに。
それからといううものの死ぬほど惚気た。
後輩達も序盤は若干引いていたものの、気付けばあちらから話しかけてくれるほど距離は縮まっていた。
男は単純で三人しかいないからよかった。
問題は女の子だった。
可愛い。穢したくない。
本田が話しかけるべき相手ではなかった。
いろいろあって、間接的とは言え、同じ教室で吹く女の子が二人増えた。
コミュ障すぎて話しかけられない。
彼女の話もできない。
そして入りたてとは思えないくらい演奏が上手い。
本田と同じくらい楽器が上手くて伸び代がありすぎるので、教えられることもない。
詰んでいた。
先輩に教育を丸投げし、先輩の引退後はパートリーダーに丸投げした。
仲が深まるわけがなかった。
気まずすぎる。
彼女に聞いても「無理。」としか言われなかった。
まだ取り返しがつくので後輩からの評価は落としたくない一心でおとなしく練習に励んだ。
逆効果だった。
「ノリ悪いよね。」「声小さいよね。」「何考えてるかわかんないよね。」「顔怖いよね。」
地獄耳なんていいことがなかった。
散々だった。
それでも彼女がいた。
泣き顔は見せなかった。
寧ろ練習に火が付いた。
そしていつの間にか演奏でリードできるようになっていた。
気がつけば後輩に尊敬されていた。
コンクールが近づいて本田は頼られていた。
嬉しかった。
何より彼女が喜んでくれたのが一番嬉しかった。
そうこうしているうちにコンクールも誕生日もすぐそこまで来ていた。