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第3話 / 全11話 · 1,344字 · 約3分
# 第2章 同じクラス
## 1
「加藤くんって、バスケ部なんでしょ?」
昼休み。颯太が一人で弁当を広げようとした瞬間、林桜がひょこっと顔を出した。
「え? うん、そうだけど」
「やっぱり! 体育のときのシュート、すごくきれいに入ってたから」
覚えられている。見られている。その事実だけで、颯太の箸を持つ手が止まる。
「林さんは……文芸部?」
「知ってるの?」
「いや、なんとなく。本読んでるイメージがあって」
言ってからしまった、と思った。電車でいつも読書してるのを見てます、なんて言えるわけがない。
でも林は嬉しそうに目を細めた。
「そうなんだ。よくわかったね。私、結構読むの好きで」
「どんなの読むの?」
「んー、恋愛小説が多いかな。最近読んだのは『君の隣の席』っていう……あ」
言ってから、林の顔が赤くなった。タイトルが恥ずかしかったらしい。
「そ、それは置いといて! 加藤くんは何読むの?」
「俺は……あんまり。漫画なら読むけど」
「何の漫画?」
「スラムダンク。バスケ部だし」
「あ! それ知ってる! お父さんが読んでた!」
「マジで? 世代じゃないのに」
「不朽の名作ってやつでしょ?」
二人で笑った。他愛もない会話。たったそれだけなのに、颯太の胸の中はぽかぽかと温かかった。
## 2
それからの毎日は、驚くほど早く過ぎた。
林桜はクラスの中心にいるタイプだった。明るくて、誰にでも優しくて、笑顔が絶えない。休み時間は女子たちに囲まれて話しているし、昼休みは弁当を広げて何人かと食べている。
そんな彼女が、なぜかよく話しかけてくる。
「加藤くん、数学のノート見せて」
「加藤くん、次の体育一緒のグループになろうよ」
「あ、加藤くん、それ美味しそう。何それ?」
たわいもないことばかりだ。でも颯太にとっては、一つ一つが宝箱を開けるみたいな瞬間だった。
一方で、気づいてしまったこともある。
林桜は、みんなに優しい。
休み時間に飴を配る。困ってる後輩を助ける。先生の荷物を運ぶのを手伝う。全部、当たり前のようにやる。
だから、颯太に話しかけてくるのも、ただの親切なのかもしれない。
そう思うと、胸がきゅっと締め付けられた。
放課後。部活の前に、颯太は教室で一人、窓の外を眺めていた。
「加藤くん、まだいたんだ」
振り返ると、林がいた。カバンを抱えて、少し息が切れている。
「文芸部の用事、終わった?」
「うん。そう言えば、加藤くん、文芸部の文化祭の企画、手伝ってくれるんだって?」
「え? ……ああ」
思い出した。亮太に頼まれて、文化祭の出し物の準備を手伝う約束をしていた。亮太は文芸部と合同で何かやるらしい。
「楽しみにしてるね!」
林が笑う。その笑顔に、颯太の一日の疲れが吹き飛んだ。
「うん。俺も」
この気持ちが、片思いなのか、それとももう少し何かなのか。
まだ名前はつけられなかった。