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禍象#000『禍象統制機構』

第1話 / 全12話 · 2,830字 · 約6分
禍象統制機構Calamity Phenomenon Control Organization 内部アーカイブ・ガイドラインおよび設立趣意






【閲覧注意】本ドキュメントは機構の根幹に関わる機密情報を含む。第3種以上のクリアランスを持たない者の閲覧を禁ずる。



【機構の目的】
禍象統制機構かしょうとうせいきこう(CPCO)は、全人類の存続と日常の保護を至上命題とする超国家的機関である。
基本原則は以下の二点に集約される。

一、人類を「禍象かしょう」の脅威から保護すること。
二、すべての「禍象かしょう」を根絶し、完全に消滅させること。


当機構は禍象に対する「保護」「共存」の立場を採らない。
禍象は自然の摂理に対する致命的な瑕疵であり、切除・消滅させるべき敵対事象と定義する。
隠蔽および封鎖は、消滅手段の確立までの応急処置、および非異常性社会に対するパニック防止策としてのみ機能する。


禍象かしょうの定義】
禍象Calamity Phenomenonとは、既知の物理法則および科学的知見から著しく逸脱した現象、物品、環境、または生物の総称である。
自然発生・人為的発生を問わず、放置した場合に人類の認知および社会秩序に不可逆的な損害を与える。

【分類体系】
当機構は禍象を「起源分類」と「性質分類」の二軸で分類する。

起源分類(主分類)
原初種げんしょしゅ:人類誕生以前から存在する禍象。惑星規模の影響を持つ。根絶手段は未確立。
残滓種ざんししゅ:原初種の活動に起因して二次的に発生した禍象。
集積種しゅうせきしゅ:人間の大量死・苦痛・狂気の蓄積から自然発生した禍象。
実体種じったいしゅ:自律的な意志を持ち独立して活動する禍象。
人為種じんいしゅ:人間が禍象を利用・複製・兵器化した結果として生じた禍象。
変異種へんいしゅ:既存の禍象が媒体・形態を変えて再出現した禍象。

性質分類(副分類)
・環境干渉型:特定の場所・物質・条件に固定されている。
・寄生型:生物の身体を介して機能する。
・精神干渉型:認知・記憶・知覚に作用する。
・概念型:物理実体を持たず、情報・構造として伝播する。
・捕食型:人間の身体・器官・属性を摂取する。

各記録の冒頭「指定分類」には起源分類と性質分類を併記する。複数の性質を持つ場合は斜線で区切る。




【組織の歴史的変遷】
CPCOの最古の前身は、江戸幕府の非公式組織禍象記録方かしょうきろくかたである。
各地で発生する異常事象を記録し、露呈前に隠蔽・封鎖する役割を担っていた。記録方の設立経緯には、後述する禍象#000の発見が直接的に関与している。

明治維新後は禍象記録会かしょうきろくかいに改称し存続した。観測・処理技術は依然として限定的であり、封鎖手段は零号資材(後述)を加工した要石・鉄杭等の物理的手段に依存していた。

第二次世界大戦期、大日本帝国陸軍の非公式部門が禍象記録会の資料および人員を強制接収し、禍象の軍事兵器化を企図した。同計画は制御不能に陥り、満州某所の実験施設において数千名の将兵が原因不明の空間的消失を遂げた。(本事件は歴史上、ソ連軍侵攻による部隊全滅として処理されている)

終戦後、GHQ超常現象対応部門が本事件の記録および記録会の残存メンバーを接収した。
1980年代以降、禍象の発生頻度が世界規模で増加したことを受け、各国情報機関の超常部門が合流。記録会の初期データベースを基礎として、現在の禍象統制機構CPCOが設立された。




【禍象#000について】


【特別警告】以下の情報は第5種クリアランス保有者にのみ開示される。無許可の閲覧・複写・口頭伝達は、理由の如何を問わず即時除籍および記憶処理の対象となる。



本アーカイブの整理番号#000は、当機構の設立趣意書としてのみならず、機構の存立基盤である一個の原初種禍象の記録番号として割り当てられている。

■ 指定分類
原初種・環境干渉型

■ 概要
禍象#000(機構内部呼称:零号れいごう)は、当機構の最初期の拠点所在地(所在地情報は本文書に記載しない)の地下に露出している鉱物性の構造体である。
地質年代測定の結果、形成時期は約四十六億年前(地球形成期)と推定された。露出部は不規則な柱状を呈し、確認されている範囲は高さ約二メートル、直径約七十センチメートルであるが、これは地殻深部に存在する本体のごく一部に過ぎない。

零号は、影響範囲内(露出部を中心とした半径約三百メートル)において、他の禍象の異常特性を著しく減衰させる性質を持つ。この性質の発生機序は解明されていない。

■ 発見と利用の経緯
零号の発見時期は記録方の設立以前であり、正確な経緯は不明である。
現存する最古の文献(室町期の写本)には、「此の石の傍にては、如何なる祟りも力を失す」との記述が確認されている。禍象記録方の設立者がこの場所に拠点を構えたのは、零号の減衰効果を経験的に認知していたためと推測される。

記録方は零号の表層から削り出した小片(以下「零号資材れいごうしざい」)を、隠密の携行品および封じ込め作業の基礎素材として使用してきた。歴代の記録において「要石」「呪符を刻んだ鉄杭」「特殊な粗塩」等と記載されている封鎖用素材は、いずれも零号資材を含有・加工したものである。
各記録に残る呪術的な手順や儀式は、封じ込めの有効成分ではなく、零号資材の運用を秘匿するためのカモフラージュであった可能性が高い。

■ 世界規模の分布
CPCO設立後の地質調査により、零号と同一の鉱物組成を持つ構造体が地球上の複数地点で露出していることが確認された。確認済みの露出点は現時点で十七箇所であり、その多くは各地の古代文明において「聖地」「霊場」として扱われてきた地点と一致する。
CPCO各支部の拠点選定は、これらの露出点の確保を前提として行われている。

■ 未解明事項
零号の本体は地殻深部に埋没しており、全体的な規模と構造は観測限界を超えている。深部探査データは、本体が少なくとも地下数百キロメートルにわたって分布している可能性を示しているが、断定には至っていない。
現在追跡中の禍象#044(原初種)の移動経路が、零号の全露出点を一貫して回避していることが確認されている。両者の間に何らかの相互作用が存在するとの仮説が提出されているが、検証は継続中である。




【初期ナンバリング(#001〜#099)の取り扱いについて】
本データベースにおける初期ナンバリングのファイル群は、禍象記録方および禍象記録会時代に日本国内で収集・編纂された古文書、調書、記録を現代語訳し、電子アーカイブ化したデータ群を指す。

閲覧にあたっては以下の点に留意すること。
・記録の舞台は原則として江戸時代〜昭和中期の日本国内に限定される。
・当時の調査手法および事象に対する誤認が、歴史的資料としての価値を優先し、原文のまま保存されている。
・現代の科学技術や世界的ネットワークに基づく知見は含まれていない。
・ナンバリングは記録方・記録会が付与した整理番号であり、事象の発生時系列とは必ずしも一致しない。
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