ありのまま
蓮翔

表示設定

文字サイズ
行間
フォント
背景
文字方向

二話

第4話 / 全15話 · 839字 · 約2分
−−莉音視点−−
「すぅ…はぁ…」
 いつも通う学校。いつも入る教室。でも、これもいつもの動作。教室の少し前で廊下のすみにより、胸に手を当てて深呼吸をする。ある程度落ち着いてきたら教室に向かう。これがあたしの日課。
「おはよ!!」
 教室に一歩足を踏み入れたところで、元気な声が後ろから呼び止めてきた。
「あ…美桜。おはよう」
「うん、おはよう!」
 朝の教室の前だから、少し元気のない返事だった。それでも、美桜は元気に優しく微笑んで返してくれる。
「教室、入ろっか」
「うん」
 教室に入ると、仲のいい数人のクラスメイトたちが挨拶してくれる。あたしもそれに返す。
 よかった、いつも通りだ。
 しばらくしてみんなが着席し始めると、チャイムが鳴る一分前にやっと望愛が駆け込んできた。
「おっはよーございますっ!」
 みんなの小さな笑い声が聞こえる。ぎりぎりチャイムが鳴る前に、望愛はあたしの後ろの席に座った。いつものことだろうと思いながら、一応小さな声で聞く。
「今日も先輩と一緒に来て、離れがたくてずっと話してたの?」
「へへっ、おっしゃる通りです…」
「やっぱり」
 少し笑いを含んだ返事を返して私は前を向いた。
 わかっていた。いつものことだから。だけどやっぱり胸が少し痛んだ。とはいえ、上手くいっているのならよかった。『友達』の恋愛が上手くいってるのなら、やっぱり嬉しいことだから。
 先輩は、あたし達が中一の頃に中三だった人で、望愛と同じ美術部だった人だ。そして、先輩の卒業前に望愛が告白して、無事、恋人となった。
「恋人、か…」
「ん? どしたの、莉音」
「え、あ、ううん! なんか羨ましいな〜って。望愛だけずるーい」
 いつのまにか声に出ていたらしい。聞こえてしまったのなら仕方ないと思い、内心焦りながら、拗ねたような口調で思ってもないことを口にする。
 そう、思ってもないのだ。…恋人なんて、彼氏なんていらない。
« 前の話 目次 次の話 »

この話への感想

まだ感想はありません。