河童の技術は世界一?(河城にとりのテーマ
第1話 / 全4話 · 2,238字 · 約5分
博麗神社で開かれた、賑やかな宴会の日。
みんなが霊夢に日頃の感謝を込めて、プレゼントを渡していた。
「霊夢ー、これあげる!」
魔理沙が差し出したのは、大きなお酒の瓶だった。
「魔理沙、ありがとう。うわー、お酒じゃん! これ、宴会が始まる前に貰ってたら今日飲めたのにさー」
「あはは、すまんすまん!」
楽しそうな笑い声が響く中、河童の河城にとりも霊夢の前に進み出た。
「おーい、霊夢ー」
「にとりかしら? また何か厄介な機械でも作ってきたんじゃないでしょうね?」
「これ、使ってよ!」
にとりが差し出したのは、最新の技術を詰め込んだ複雑な機械だった。しかし、霊夢は困ったように眉をひそめる。
「んー……また変な機械じゃん。どこに置いとけばいいのよ。よく使い方がわからないのよね。カッパの発明って、どうせ変なものばっかりだし」
「えへへ……」
にとりは愛想笑いを浮かべながら、心の中でそっとため息をついた。
(やっぱり、河童の技術は認めてくれないよなー。まあ、あいつらが時代遅れで理解できてないだけだし!)
にとりは魔理沙にも自慢の道具を渡してみたが、「私の家がごちゃごちゃになっちゃうよー」と苦笑いされてしまう。
帰り道、玄武の沢を歩きながら、にとりの心は沈んでいた。
(んー、結局みんなからの評価はいまいちだったな。この間の工事も不評だったし……。本当に、河童の技術は世界一なのか……?)
数日後。人間の里の露店で、にとりは頭を抱えていた。
「んー……売れ残りだー。どうしよう」
そこへ、天狗の射命丸文が通りかかる。
「あ! ちょうどいいところに、文さん!」
「ん? にとりさんですか? 私に何か新聞の記事にでもしてほしいネタが?」
「いや、ちょっと売れ残りがあってさ。なんか変な傷がついちゃってるし、今なら無料であげるよ」
にとりが差し出したのは、宴会で不評だったあの機械だった。
文は少し微妙な顔をしながらそれを受け取る。
「んー。まあ、仕方ないからもらってあげますよ」
「ありがとうね……」
(仕方ないから、か……)
にとりは、人里に設置しておいたリサイクルボックスの回収に向かった。
不要になったガラクタを持ち帰って、次の発明の素材にするためだ。
箱の中身を覗き込んだ瞬間、にとりの指が止まった。
(……これ、さっき文さんにあげた、傷ありの機械だ……)
もう捨てられている。胸の奥がキリキリと痛んだ。
(はぁ。やっぱりダメなんだ。なんのために、私はこんなのを作ってるんだろう)
絶望しながら箱の底を漁っていると、見慣れない物体が指に触れた。
「ん? なんだこのガラクタ。細長いペンみたいな……初めて見るな。こんなの、私は作ってないし。めずらしい、持って帰るか」
アジトに戻り、にとりはそのペンを調べた。
「なんだこれ。上の部分をカチカチと押すと、芯が出てきて文字が描けるようになるペンだと。多分、外の世界のやつだな。……別に、大した技術が使われてるわけじゃない。だけど――すごく、実用的だ」
ハッとした。
「そうだ。河童たちの商品は、実用的じゃなかったんだ。自分の技術を見せつけることばかり考えて、使う人のことを考えてなかった。……もう、河童の技術なんて認められないや。諦めよう」
それからのにとりは、自分のプライドを捨てて「使いやすさ」だけを意識した道具を作り始めた。
その努力が実を結び、最近は里での評判も少しずつ上がってきた。
「よし、ちょっと神社に宣伝に行ってこようかな」
博麗神社。
「おーい、霊夢ー! 新しい商品を持ってきたよ。この『ミニ扇風機』、すごく軽くて使いやすいだろ?」
霊夢は扇風機を受け取り、涼しい風に当たりながら言った。
「確かに使いやすいわね。……でも、なんか河童って感じがしないのよね。最近、あんたの作る道具が使いやすくなったのは良いことだけど」
「え?」
にとりが驚いていると、霊夢は神社の奥から「あるもの」を持ってきた。
「実はさ、最近意外と河童のやつ使ってるんだよね。あんたが売れ残したやつ、毎回一個ずつ勝手に持って行ってたから」
「おい! 勝手に持って行ってたのかよ!」
にとりは呆れたが、どこか嬉しかった。
「でも、ありがたいね」
すると霊夢は、ゴトッと少し壊れた大きな機械を机に置いた。宴会の日に、にとりがプレゼントしたあの機械だった。
「で。これ、直してくれない?」
(それ……前のプレゼント。捨てないで、取っといてくれたんだ……)
「これ、意外と使いやすくてねぇ。これもいいやつよ。やっぱ河童ってさ、自分のことを自分で一番理解してると思うんだ。だから、これからも頑張りなよ」
霊夢の言葉が、にとりの心に深く染み渡っていく。
使いやすさを求めて、河童としてのプライドを捨てようとしていた。でも、霊夢はあの「河童らしい尖った技術」も、ちゃんと愛してくれていたのだ。
(……実用的なのと、河童の技術。どっちか片方じゃなくて、両方を合わせたらいいんじゃん!)
にとりの瞳に、かつての輝きが戻った。
霊夢は少し照れくさそうに微笑む。
「もし困ったら、私のところにいつでもきなよ」
「……ありがと。わかったよ、霊夢!」
にとりは壊れたプレゼントを大切に抱きしめ、最高の笑顔で玄武の沢へと走っていった。