表示設定

文字サイズ
行間
フォント
背景
文字方向

見つけた日。

第1話 / 全2話 · 777字 · 約2分
挿絵
 数日前から杉浦が行方不明になっていた。 海藤さんから聞いた話、とある日「ゲーセン行ってくる」と言い残し事務所を出ていったらしい。 そのせいで依頼は中止。猫の捜索の依頼しかなかったことに初めて感謝した。
夜の神室町。ネオンが闇を埋め、残った闇が更に深くなってゆく。
闇が落ちる、とある路地裏。
場違いで少し大きめの段ボールが置いてあった。
中には少年の影と、三角の2つの突起。そして、ゆらゆら揺れる長い尾。 少しオレンジがかった茶髪が、雨で少し黒くなっている。 灰色のパーカーは雨に濡れて完全に元の色を失っていた。
そんな影を、探偵兼弁護士は見逃さなかった。 警戒させないようゆっくりと近付き、声をかける。普段の声とは、少しトーンを下げて。 「....おい、杉浦。」
少年___いや、杉浦文也は顔を上げた。 「...なんで、俺の名前.....。」
不思議そうな目でこちらを見ている。もう彼は28歳の青年ではなく、12歳の少年になってしまったようだ。
「なんでって、.....なんでだろうな。」
全て話せば、気味が悪く思われるだろう。「俺、アンタが28歳の時のダチ。」とか言ってしまえば、完璧な変質者だ。
海藤さんに電話でもかけようかと携帯を取り出すと、杉浦は声を出した。
「....誰かに、電話するの?」
そんなこと言うだなんて、よっぽどな不都合でもあるのだろうか。
「....なんでだ?」
杉浦は続いて言う。
「通報とかするんでしょ、大人だから。」 「大人だから。」というワードが、胸に刺さった。
「...わあったよ。」
杉浦をそっと抱え、ジャケットを上から被せて周りから見えないようにする。
「ちょっと待ってろよ。事務所行くから。」 ジャケットの中の温もりが、ごそ、と頷いた気がした。
目次 次の話 »

この話への感想

まだ感想はありません。