多分明日も迷惑をかける
第1話 / 全3話 · 2,133字 · 約5分
ユアオ心中もどき話
初っ端瀕死
悲壮感はあんまりないです
射士郎 side
あぁ、もうだめだ。
息が細い、苦しい。
たまに、ごぽりと嫌な音を立てて血の味がする。
寿命で死ねないだろうとは思っていたが、
まさかブンブンジャーとして死ぬなんて。
大也と出会う前。俺は、なんとなく25とかで死ぬ気がしていた。
理由なんてない。ただ釈然と、
「長生きはできないだろう」
と思っていた。
腕には絶対の自信がある。
どんな仕事だってこなしてみせる。
だけど、自身の安全なんて確保しない。
そんなことをしたら効率が落ちるし、そもそも生きたいなんて思わなかったから。
だけど23歳のあの日。
俺の全てが変わった。
「惚れたよ、その腕。俺が買った!」
あの日俺は、範道大也の所有物になった。
正確には「仲間」だが、買われているのだからまぁ間違ってもない。
言われるがまま共に過ごして、たまに呆れて、たまに笑って。
頼る、ということの意味を、初めて正確に理解した。
赤、青、桃、黒、橙、紫。
カラフルなんて俺には無縁だった。
俺には、爽やかなブルーなんて似合わなかった。
いつも、いつだって血の赤に塗れていた。
だからといって、赤が似合う訳でもない。
むしろ赤が似合うのは大也のほうだし、俺はアイツ以上に赤の似合う人間を知らない。
冷徹という意味であれば、確かに俺は青かもしれない。
今まで灰色の、なんの色も無い世界に生きていた俺に、範道大也は明るすぎた。
赤は、あまりに強烈だった。
あれよあれよと自身にも色をつけられ、物を送られ、いつしか俺の色は青で固定された。
走馬灯のように今までを思い出しながら、隣で倒れる大也を見る。
当たり前に苦しそうで、でも誇らしそうで。
俺たちが今こうして伏せっているという犠牲だけで、何千何万の命が救われた。
それが、嬉しくてたまらないのだろう。
だけど大也はきっと、俺たちをも生かそうとしている。
もう無理だ。間に合わない。
いや、大也1人ならなんとかなるかもしれない。
が、その時はきっと自己嫌悪で潰れてしまうだろう。
だから。
「たいや」
上手く口が動かない。だけど、伝えなければ。
「もうねむろう」
ゆっくり、されど急いで視線がこちらに向く。
酷く傷付いた顔と、隠しきれない安堵。
俺はお前のように優しくないから、こんな言い方しかできない。
すまないな。
「もう、じゅうぶんだ」
俺も、お前も。
大也 side
痛い。苦しい。寒い。
あぁ、死ぬんだ。
…だけど、仲間を道連れにする訳には行かない
俺の我儘にこれだけ付き合わせたんだ
最期も一緒に、なんて、望みすぎだ。
何より俺は、君たちに生きていて欲しい。
酸欠で頭が回らない。血も足りない。
でも考えなければ。仲間を助ける方法を。
目なんか見なくたってわかる。シャーシロは今、諦めようとしてる。
それじゃダメだ。それはダメだ。
ここまで、じゃダメだ。これからも、なんだ。
君が、明確に諦めを言葉にしてしまう前に。
何かないか。何か、なにか_
「たいや」
…待っ、て。待ってくれ
「もうねむろう」
どうして君は、そんなにも。
あぁ、優しい顔だ。
そんなにも酷いことを言うのに、そんなにも優しい顔をして。
俺は君と生きていたい。君とならなんだって出来る気がしてるんだ。
なぁ、諦めないでくれよ。
君が諦めてしまったら、俺が諦めない理由が無くなるだろ。
なぁ、シャーシロ、
「もう、じゅうぶんだ」
…そうか。
諦めてるんじゃないんだ
満足してるんだ。
そうだよな
俺たちは、ここまで頑張ったもんな。
俺は、25くらいで死ぬと思ってた。
自他共に認めるスリルジャンキーで、危険を顧みなかったから。
でも君に出逢えた
死ぬと思ってた年齢から、10年も生きた
戦った。
なら、俺も眠るよ
君は、いつも俺の睡眠不足を心配してくれたもんな。
今回ばかりは、言うことを聞くよ。
あの日君と手を繋いで、君が生きてると実感した。
そこにいると実感した。
だから、もう一度
「なぁ、しゃあしろ」
掠れた声。情けない声。だけど伝えたい
「てをにぎってくれないか」
安心したい。
君が、一緒にいてくれると。
「あぁ。」
当たり前のように頷いて、弱々しく手を握られる。
だから俺も、精一杯握り返す。
どこまでも行きたかった。仲間と一緒に。
でも最期まで仲間と居られたんだから、俺は、とんでもない幸せ者だ。
NO side
おやすみ、シャーシロ。
おやすみ、大也。
来世があるなら、もう一度君と。
来世があったら、またお前と。
次はあんなことがしたい。
なら俺があぁいうことをしてやろう。
次もこんなことがしたい。
なら俺もそんなことをしてやろう。
おやすみなさい、いい夢を。
多分明日も、面倒事を起こすから。
そしたら何度でも、共に笑おう。