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〈第七話〉理科室での作業

放課後の理科室は、昼間の喧騒が嘘のように静かだった。

窓から差し込む夕方の光が、

机の上のビーカーや金属器具を淡く照らしている。



湊は、昨日と同じように理科室の扉をそっと開けた。

藤原先生は、白衣の袖をまくりながら、

壊れた器具を分解しているところだった。



「白石、来たのか」



先生の声は低くて落ち着いていて、

湊の胸の緊張を少しだけほどいてくれる。



「えっと......その......昨日の、続き......」



言葉はつっかえるけれど、

湊の視線は器具から離れなかった。



「よし、一緒に見てみるか」



先生が椅子を引いてくれた。

湊はそっと腰を下ろし、

器具の内部を覗き込む。



金属の部品が複雑に組み合わさり、

細いバネがいくつも連なっている。

湊は息をのんだ。



(こんなふうに......全部がつながって動いてるんだ)



先生がドライバーで部品を外すと、

内部の歯車がゆっくりと姿を見せた。



「白石、ここ。

  この歯車が少しずれてるんだ。

  だから動きが悪くなる」



湊は目を凝らした。

確かに、ほんのわずかに歯車が傾いている。



「......すごい......

   こんな小さなずれで、全部が止まっちゃうんだ......」



「そうだ。

  仕組みってのは、どこか一つが狂うと全体に影響する。

  人間の体も、機械も、同じだ」



先生の言葉が、

湊の胸の奥に静かに落ちていく。



(仕組み......全部がつながってる......)



湊は、母の装置のことを思い出した。

あれも、どこか一つが動けば、

何かが変わるのだろうか。
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