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〈第八話〉佐伯さんの笑顔の理由が分からない

「湊くーん!」



突然、理科室の扉が勢いよく開いた。

佐伯さんが息を弾ませながら入ってくる。



「わっ......びっくりした......」



湊は思わず肩をすくめた。



「ごめんごめん!

  あ、先生もいたんだ」



佐伯さんはにこっと笑った。

その笑顔は、まるで太陽みたいに明るい。



「湊君、今日もここにいるかなって思ってさ」



その言葉に、湊の胸がざわついた。



(なんで......そんなふうに笑うんだろう)



器具の仕組みならわかる。

歯車がどう動くのかも、

バネがどう働くかも、

見れば理解できる。



でも、

佐伯さんの笑顔の”理由”は分からない。



「白石、どうした?」



先生が声をかける。

湊は首を横に振った。



「......なんでも、ない......」



佐伯さんは気にせず、

机の上の器具を覗き込んだ。



「これ、直してるの?

  湊くん、すごいね!」



また笑顔。

また胸がざわつく。



(どうして......ぼくなんかに......)



湊は視線を落とし、

器具の影をじっと見つめた。
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