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〈第九話〉心の仕組みへの興味

帰り道。

夕方の風が、湊の頬をそっと撫でた。



パン屋の前に来ると、

看板が今日も揺れていた。

昨日よりも、少しだけ大きく揺れている気がする。



湊は立ち止まり、

看板を見つめた。



「......仕組みがある。

  ちゃんと理由がある」



看板の揺れには、

金具のゆるみやバネの古さ、

土台の傾きが関係している。



全部がつながって、

”揺れる”という結果になっている。



(じゃあ......人の気持ちも......?)



佐伯さんの笑顔。

胸のざわつき。

先生の言葉。

母の言葉。



全部が、

どこかでつながっている気がした。



「人の気持ちにも......

  仕組みがあるのかな......」


その瞬間、

ポケットの中で、

母の装置がかすかに震えた。



湊は気付かない。

でも、確かに震えた。



まるで、

湊のつぶやきに応えるように
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