ありのまま
蓮翔

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九話

第11話 / 全15話 · 1,417字 · 約3分
ーー美桜視点−−
 望愛の家を出て、莉音たちと別れてからというもの、神様とやらがずっとついてきている。いや、急に出てきて俺たちの名前を知ってるから、信じることしかできないんだけど。
 …てゆーか、この人、…いや、神様はどこまで知ってるんだろう…。
「ねぇ、神様」
「ん? なんだい?」
「神様って、私…いや、俺のこと、どこまで知ってるの?」
「どこまでって、何が?」
「俺の一人称聞いて、違和感ないの?」
「違和感? そんなのないけど」
「え………? じ、じゃあ、俺の性別のこと、知ってる…?」
「ん? 君の性別が男ってこと? あ、体は女の子か…」
「やっぱり知ってるんだ…」
「まーね。それを深く気にしたことなんてないけど。だって、君も、家族の性別のことって、そんなに気にしないでしょ?」
「いや、だって、家族のみんなは普通だから…」
「普通って何?」
「え、?」
「だから、君にとっての普通ってなんだろうって思ってさ」
「え…っと、体と心の性別が一緒で、異性を好きになって…」
「なんでそう思うのかな?」
「え…? だって、みんなそうじゃん」
「うん、そういう人が多いね。というか、そういう人もいるね。でもさ、美桜。だからと言って、それが『普通』な訳でも、美桜たちが『普通じゃない』訳でもない。ぼくたち神から言わせて見れば、そんなの、ただ人間が勝手に言い出しただけの、偏見だ」
「まぁ…、確かにそうなのかもしれないけど…。俺は女っぽく振る舞ってるし、あの二人以外には黙ってるから、否定されたり非難されたりはまだしてない。でも、いつされるかわからない。他の似たような人たちが非難されてるっていうのは、ネットを見てたらわかる。だから…」
「非難や否定がされるのは当然って?」
「うん…」
「ごめん、今だけ心を読ませてもらった。君は、とても苦しんできたんだね。そして、今も苦しんでいて、他にも苦しんでいる人たちを知っている。とても…優しいね…」
 顔を上げると、神様は少し悲しそうに微笑んでいた。そして、いつも言われると、演じてるだけの自分が辛くなる『優しい』が、今だけはとても暖かかった。
「ぼくはね、人それぞれ、個性というものがあると思ってるんだ。君のその体、心、性別、考え方、全て。君は、『体と心の性別が一緒』で『異性を好きになる』人のことを普通だと言った。でも、ぼくからしたら、それもだって個性だ」
「え…」
「『体の性別と心の性別が一致している』という事実があっても、それはたまたまだ。だって、体と心は別のものだろ?そして、『異性を好きになる』という事実があっても、それはたまたまその人が好きになる性別が異性だっただけで、その人が好きになる性別は女性だった、男性だった、どっちもだった、性別なんて恋愛感情に関係なかった。ただ、それだけのことだ」
「そ…っか…」
「『その事実』がその人にとっての普通で、世界にとっての個性だ。少なくとも、ぼくはそう捉えているよ。もちろん、君にも君の考え方があるだろう。だから、無理してこの考え方を受け入れなくてもいい。ただ、こういう考え方もあるんだという事を、覚えておいてほしいな」
「…うん、わかった。ありがとね」
「ううん、どういたしまして」
 家に着くと、神様は姿を消した。少し、心が、暖かくもなり、同時に波打ってもいた。
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