ありのまま
蓮翔

表示設定

文字サイズ
行間
フォント
背景
文字方向

十一話

第13話 / 全15話 · 1,630字 · 約4分
−−望愛視点−−
 あの日から、柊真と会えていない。そして、連絡もほとんどできていない。何かあったのか聞いても、はぐらかして教えてくれない。
「嫌われたのかな…」
 ふと、そんな言葉が口から出てしまうほど、私は今不安なのだと気づいた。
「神様、いる…?」
「うん、いるよ。どうしたの?」
 私が呼ぶと、神様はそこに姿を現してくれた。
「私って、柊真に嫌われたのかな…?」
「うーん、どうだろう…。そこは本人じゃないとわからないんじゃないかな」
「でも! 神様ならわかるでしょ…!?」
「望愛。ぼくは、人間一人の希望で、勝手に大切な家族の心をのぞいたりしない」
「……っ」
「ごめんね、強く言いすぎた。でもね、望愛。例えば、望愛が人の心を読むことができる能力を持っているとするよ。そして、友達に頼まれたからって言って、勝手に柊真の心をのぞいて、その友達に伝えることってできる? そんなこと、したい?」
「ううん、したくない…。ごめんね、確かにそうだよね…。ありがと…」
「うん、でも、君の辛い気持ちもわかる。だから、ぼくも柊真と話すよ。勝手に心の中をのぞくのは抵抗があるけど、話すことなら相手と合意で思いを聞けるでしょ?」
「うん…! ありがとう、神様」

−−柊真視点−−
 一人でいた部屋に、もう一つの影が現れた。
「ねぇ、柊真」
「ん? あぁ、神様」
「うん、ぼくだよ。ねぇ、柊真。柊真の心は今、『辛い』って『どうしよう』って叫んでる。よければ、ぼくにその気持ちを少し聴かせてもらえないかな?」
「…どうせ、望愛に話すんだろ?」
「ぼく、そんなこと言ったかな? ぼくは、ぼくが君の心の叫びを聴いて、その気持ちを聴かせてほしいから、君に話しかけたよ」
「………」
「どうかな? 君が嫌なら、断ってくれてもいい。教えてくれるけど、言語化が難しいのなら、ゆっくりでいい。だから、どうか教えてもらえないかな?」
「…わかった」
 俺は、最近、自分の性別が本当に男なのかわかんなくなる時がある。『俺』という、いつも使う一人称に違和感を感じる時もある。口調が少し変わっている時さえあったかもしれない。
 だけど、あそこでみんなと別れてから、それがずっと続いている。女ではないかもしれない。でも、自分に性別なんてないと思うときがあって、その時には男女別れて何かをするとイラッとする。性別なんてどうでもよくて、でも、男でもないと感じる時だってある。もしかしたら、性別が一つじゃないかもしれないと感じる時だってある。
 そういう時は、少し苦しくなる。だって、みんなは『俺』と接しているだけで、俺のことを男としか思ってないし、望愛が好きなのも『俺』だ。それだから、誰かと関わっているのが、苦しい。
「そっか、君はそう思ってるんだね…。君がそう感じているのはわかった。でも、一つ言わせて」
「え…?」
「そんなことない。もし、君が言うような人がいても、それが全てじゃない。少なくとも、ぼくはそんなふうに思って、君と接していない。どんな時も、君は君だ。この言葉じゃ足りないかな?君自身がどうかんじている自分でさえ、ぼくは愛している。それに…」
「…?」
「君は、望愛に聞いたのかい?」
「何が?」
「望愛がそう思っているか、君の言う『俺』だけを好いているのか」
「そんなん、聞かなくたってわかるだろ。それに…怖い」
「え?」
「怖くて…聞けない…。もし、本当にそうだった場合に、俺はどうしようもないほど傷つくと思う…」
「そっか…。確かに、そうかもしれないね。うん。今度、みんなで話す時間を作ろうか」
「え? みんなって?」
「この前集まったメンバーだよ。そこで、ぼくも話したいことがあるしね…」
「…わかった」
「じゃあ、ぼくから望愛に提案してみるよ。連絡待っててね」
「…あぁ。またね」
« 前の話 目次 次の話 »

この話への感想

まだ感想はありません。