四話
第6話 / 全15話 · 1,895字 · 約4分
−−玲音視点−−
「ただいま」
「おかえりー」
すでに家に帰ってきていた莉音が返してくれた。
この家には、お母さんとお父さんと双子の姉の莉音と僕で住んでいる。多分、『普通』な家だ。ただ、少し僕には…僕たちには、あまり人に気軽に言えない悩みがあった。
僕と莉音は、他の家庭と比べて、比較的仲のいい姉弟だと思う。だから、お互いの抱えている他人には気軽に言えない悩みを話すことがあった。
僕の悩みは、可愛いものや女装が好きだと言うことだ。それについては、家族も知っている。…いや、少し違うかもしれない。『僕がそれらを好きだということは知っているが、悩んでることは知らない。最近はもう忘れてしまい、考えたこともない。』という方が正しいかもしれない。
僕は、体が成長していくとともに、可愛いものが好きなのはあまり受け入れてもらえない、理解してもらえないということがわかっていった。僕は傷つきたくなかった。だから、傷つく前に諦めた。家族の前で話題に出すこともやめた。だけど、部屋の奥にスペースを作って、そこに好きな可愛いものを置いている。たまに莉音には見せたりもする。
だけど、莉音は違う。きっと、僕以外、誰にも話していない。ずっと一人で抱え込んでいる。彼女は、小学校のある時から、不登校になった。その理由こそ、彼女が抱えている悩みだ。そして彼女は、中学校からまた通いたいと言い、知り合いのいない少し離れた中学校へ入学した。僕は元々二人で通う予定だった中学校へ入学した。そこには、僕の小学校からの友達も数人通っていた。
彼女の悩みは、自分が同性愛者と言うことだ。LGBTQ+のL。つまり、性自認は女性だが、女性を好きになるということだ。小学生の頃、クラスの女子達で恋バナをしていたらしい。当時はまだ、彼女も僕も四年生だった。
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「みんなって好きな人いる〜?」
「いるよ! えっとねー…、〇〇くん!」
「そうなんだ! 人気だよね〜。頑張れ!」
「莉音ちゃんは?」
「あたし? あたしもいるよ」
「え、だれだれ!?」
「〇〇ちゃん」
「…え?」
「それって、女の子が女の子を好きってこと? それって、おかしくない?」
「普通、女の子は男の子を好きになるんだよね」
「え…? あ…」
「〇〇ちゃんどうするんだろ」
「あのさ、告白しない方がいいんじゃない? だって、『変』だもん。きっとそう言われるよ」
「そ…っか。教えてくれてありがとね」
「で、でも。もしかしたら、今回は女の子だっただけかもしれないよ…?」
「…ごめん。きっとあたし、女の子しか好きにならないんだ。でも、そう言ってくれてありがとね!」
これは、家に帰ってきた時、莉音が泣きながら僕に話してくれたこと。
そして、だんだんそれは噂となって、その場にいた女子達により広められていった。
「ねぇ、三組の莉音ちゃん、女の子が好きなんだって」
「え、恋愛で? それって、ドウセイアイってやつ?」
「そう!なんか…」
『変だよね』。その言葉が、僕の大好きな双子の心を抉った。
そして、莉音は不登校になった。言われ始めていた時は、それでも笑顔を作って行っていた。それでも、やっぱり人はいつか限界を迎える。僕の部屋に来た莉音は、お母さんのところまで一緒に来てと言った。泣きながら莉音は、
「お母さん、あたしもう学校行きたくない。行かない。もう嫌なの…」
と言った。
僕はその間、莉音の背中をさすることしかできなかった。
そして五年生になってしばらくたったある日。
「なー玲音! そーいやお前って姉がいたんだっけ?」
「うん、いるよ。でも、双子の姉だけどね」
「おねーさんに、俺の彼女になりませんか? って言っといて!」
笑いながら話す友達に少し嫌気がさした。でもきっと、彼は知らないのだ。だから仕方がないと思う。転入生だし。
「え、お前しんねーの? コイツの双子、どーせいあいしゃっつって、女しか好きにならないんだぜ?」
「え、そうなの? マジ!? やべー、危なかった。変な奴と絡みたくないからなー」
その瞬間、どうしようもないほどの怒りがわいた。その日から、もう僕はその友達と話さなくなった。
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最近の莉音は、クラスでも友達とも上手くやってるみたいだ。だけど、やっぱり言ってないみたい。別に、彼女が言いたくないのなら、言う必要はないと思う。ただ、僕はそれで彼女が一人で抱え込むのはすごく嫌だった。