五話
第7話 / 全15話 · 989字 · 約2分
−−望愛視点−−
「ただいま〜。…って言っても誰もいないんだけどさ」
家に帰った時は人がいなくても、ただいまと言う。それを小学校で教わってから、今でも続けている。まぁ、これを続けているのなんて、きっと私くらいでしょ。いても一人二人程度だと思う。
だって、ママに迷惑はかけられないから。うちはママとパパが、私が小学校に入学する少し前に離婚して、今は二人きり。
まぁ、そんなことはどうでもいいからよし!
「ん?」
スマホがピロンと可愛い音を鳴らして画面を明るくした。
「柊真だぁ!」
画面を開くと、大好きな柊真からの連絡が来ていた。
『どう?ちゃんと帰れた?』
「えへへっ」
『うん!連絡ありがと!』
『どういたしまして笑』
『へへっ、好き!』
『俺も』
「へへっ、やったぁ!」
幸せだなぁ…。大好きな人と仲良くなれて、大好きな人に愛されて、大好きな人と話せて。
最近は、柊真のおかげで幸せだと思える。生まれてきたことに、生活できてることに、周りの人に、たくさん感謝できる。
『いつもありがとっ!』
『ん?何が?』
『全部だよ!』
既読がつかなくなって、返事が来ないから、スマホの画面を消して布団に転がる。
「柊真、今何してるかなー…?」
最近ずっと柊真のことを考えている。
そういえば、美桜たちが柊真と遊びたがってたっけ…? よし! 提案してみよ!
『そういえば、私の友達が柊真と遊びたいって言ってるんだけど、どう?』
−−柊真視点−−
だめだ。そう思って俺はスマホの画面を消した。
最近、俺はたまに、自分の性別が本当に男なのかわかんなくなる時がある。『俺』という、いつも使う一人称に違和感を感じる時もある。口調が少し変わってるかもしれないのも嫌だ。
だけど、望愛と話してる最中になるのは初めてだった。ただ、望愛が好きなのは『俺』だ。男で、望愛が好きで、いつもの口調の俺だ。だから、今は話さないほうがいい。
「はぁ…、俺、どうしたんだろ」
少しすると、スマホが振動で、通知を知らせた。
『そういえば、私の友達が柊真と遊びたいって言ってるんだけど、どう?』
…いいかもな。でも、最近こういうことがよくある。その子達と遊んでいるうちにこういうことがあったらと考えると、少しためらった。