ありのまま
蓮翔

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六話

第8話 / 全15話 · 622字 · 約2分
−−美桜視点−−
「ただいま〜」
「おかえり、美桜」
 お母さんが笑顔で玄関まで迎えに来てくれた。
「今日はお父さん何時頃帰ってくる?」
「八時頃だったと思うな」
「わかったよ。じゃあ、それまで部屋で勉強してるね」
「うん。頑張ってるね〜」
 自分の部屋に入り、ため息をつく。
 やっと部屋に帰ってきた。そう思うとため息を我慢できなかった。俺にとって、自分の部屋だけが安心できる場所だった。莉音と望愛の二人といる時は、性の感じ方について知ってもらっているから、他の人といる時より安心できる。ただ、学校とかだと他にも人がいることが多い。
 だけど、家が俺にとっては一番居づらい場所だった。俺の性別のことは、両親は知らない。というか、あの二人以外知らない。いつかは覚えてないけれど、二人に名前の由来を聞いたことがある。『美しい桜のように、優しくて可愛らしい女の子になってほしい』という想いで、この名前をつけたそうだ。両親は俺に、『可愛くて優しい女の子』でいることを願っている。だから、言えない。打ち明けられるはずがないのだ。
 俺は今も、お母さんやお父さんの願い通りに、外では過ごしている。
 ここにしか、俺の本当の居場所はない…。でも大丈夫。俺が我慢すればいいだけだから。親二人の願うように、可愛らしく過ごして、綺麗な所作で、人に優しくして、そして誰か男と付き合って、幸せになればいいだけだから。幸せ…って、なんだっけ…?
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