魔理沙が魔法を使えるまで(霧雨魔理沙のテーマ
第3話 / 全4話 · 1,782字 · 約4分
マジック「おーい、アリスー!」息を切らせて駆け込んできた人影に、アリス・マーガトロイドは呆れたようにため息をついた。「どうしたの? そんなに焦ってさ」「私さ。魔法を、使ってみたいの!」真っ直ぐな瞳。アリスは人形を動かす手を止め、少女を冷ややかな、だがどこか試すような目で見つめた。「魔法? そう簡単なものじゃないわよ」「そんなん承知してるよ!」言葉に迷いはなかった。その瞬間、アリスの肌をピリリとした緊張感が奔る。少女の胸の奥から溢れ出る、異常なまでの熱量。「……っ? 感じるわね、その心」「だろ?」少女はニカッと不敵に笑った。アリスは小さく息を吐き、机の引き出しを開ける。「まぁ、きついかもしれん。基礎の練習は教えてあげるよ。でも、応用は……この本を渡すから、それで自分でやりなさい」「わかったわ!」それから数日、少女は泥にまみれ、寝食を忘れて基礎の魔力操作に没頭した。「んー!!! 終わったわー!」少女は指先から小さな光の粒を放ち、満足げに声を上げた。「ちょっとのマジックはできるようになったな。そういえば、アリスが本を見ると良いとか言ってたな。よしっ。修行のためにもやるか!」手渡された古びた魔導書。期待を胸に、少女は勢いよくページをめくった。「本を開いてって……白紙ぃ!?!?」何度めくっても、インクの跡すらない。「どういうこと?! ……んー、わからないな。まっ、基礎はわかってるし、とにかくやってみるか!」さらに数日後。がむしゃらに魔力を練るものの、手応えは掴めない。「んー、いまいちわからないな……。あ! そういえば霊夢がいたな。相談だけしてみるか」少女は博麗神社へと向かい、境内でのんびりとお茶をすする紅白の巫女に声をかけた。「おーい、霊夢ー!」「どうしたの?」少女はこれまでの経緯を、身振り手振りを交えて一気にまくし立てた。「……ってことがあってさ」「ふーん」霊夢は興味なさそうに湯呑みを置く。「魔法の使い方、教えてくれないか?」「教えられるけど、教えられないわ」「どういうこと?」霊夢は少女の目をまっすぐに見据えた。「教えてしまったら、それは『私の魔法』になってしまうじゃない」「そうか……。じゃあ、私の魔法はどこにあるの?」「ここにもう、あるじゃない」「っ?」少女は自分の胸に手を当てた。「でも、それを具現化できてないだけ。具現化には時間がかかるわ。……でもね、あなたの近くに、それを助けるアイテムがあるじゃない」脳裏に、あの白紙の魔導書が浮かぶ。「っ!!!」少女の瞳に、かつてない閃光が宿った。「帰るのぜ!」「(ふふ。口調まで変わっちゃって。あとちょっとね)」背を向けて疾走する少女の後ろ姿を見送りながら、霊夢は優しく微笑んだ。自室に飛び込んだ少女は、狂ったように部屋をひっくり返す。「ここに入れた気が……あった! 本!」ページを開く。やはり、ただの白い紙だ。「っん。白紙だ。白紙だけど……見える。見える、見えるぞ!」そこには文字などない。しかし、少女の『魔法への恋心』が、真っ白なページに彼女だけの術式を浮かび上がらせていた。「できる気がする。せっかくだし、名前もつけるか」少女は本を片手に、外へと飛び出した。夜空に向かって、全魔力を指先、いや、己の全存在に集中させる。「魔法に恋した……『恋符』!」大気が震える。星々が味方をするように輝きを増した。「マスタースパーク!!!!」ドォォォォォン!!!極太の七色の光条が、夜闇を焼き尽くさんばかりに一閃し、遥か彼方の空を貫いた。圧倒的な破壊力と、それ以上に美しい光。「やったぁぁーーー!!!!」少女は大の字になって笑った。その様子を、少し離れた木陰から見守る二人の影があった。「ふふふ。成功してるわね」「だね。ありがとうね、霊夢も協力してくれて」アリスの言葉に、霊夢は静かに頷く。「ものっていうのは、努力してこそできるものね。教えることはできるけど、やるのはやる人だけ。そのためには『本当の心』が必要だわ。できるのは一筋縄ではいかないのよね」その時、大はしゃぎしていた少女が、はたと気づいて叫んだ。「よし! 霊夢たちに伝えて……って、そこにいるじゃん!」「ふふ」「見てたか?」「見てたわよ」少女は真っ赤になり、二人はいたずらっぽく微笑み返した。霧雨魔理沙の、偉大な魔法使いとしての第一歩だった。