父と兄と
第2話 / 全6話 · 745字 · 約2分
「お前……殿下に婚約破棄されたと聞いたぞ!?」
「駄目でしたか? 私、もう嫌なの。あちらから話を持ちかけてくださって……。本当に、あの時は神様かと思いましたわ……」
私がうっとりした顔でそう言うと、お父様は頭を抱えた。
「はあ……、それにしても小さい頃から変わらないな……。お前は王妃になりたくなかったのか!?」
「はい、そうですけど?」
私が即答すると、お父様は眉をひそめたが、すぐにフッと笑った。
「お前はもうそのままでいた方がこっちも気が楽だ」
「ふふ、こちらこそですわ」
コンコン。
お風呂から上がって、部屋のソファに腰掛けていると、扉が叩かれた。
「はい?」
私が応答すると、メイドが恭しくドアを開ける。
「メレシー、少し話がしたいのだが……」
「あら、お兄様。どうぞこちらへ」
私が少しお辞儀をすると、お兄様は向かいのソファに座った。
「それで、お話とは?」
「ハッ、白々しいな。アイツとの婚約、破棄したんだろう?」
「まあ、お兄様、私は破棄された側ですわ?」
お兄様の皮肉に悪い笑みで答えると、フッ、と鼻で笑われる。
「お前としてはまあ良い方向に行ったようだな。何をしたら婚約破棄何かされるのか……」
「アリーナ男爵のご令嬢、カノンさんを買収いたしましたの。私を婚約破棄させるために色術を使いなさいと。そしたら『王妃になれるんですね、ありがとうございます!』と喜んで駆けていったのですわ」
「妹とはいえど、怖いものは怖いな。お前を敵に回したらすぐに殺されそうだ……」
お兄様は髪をかき上げると、見下すように腕を組む。
「まあ、お前の未来は自分で決めるといい」